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事例紹介

事例インタビュー

高砂熱学工業株式会社様

高砂熱学工業株式会社様は2017年から業務改革の一環として業務基盤整備に着手され、それまで各支店が独自に運用していたルールや業務プロセスを棚卸し、全社統一の業務要領書を作成されました。それに基づいた業務の遂行によって、効率化や時間外労働削減などの高い成果をあげられている姿は、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)の鑑と言えます。
高砂熱学工業様がDXやCXという言葉が一般的ではなかった時代から、いち早く業務改革に取り組まれ、業務要領書の作成にとどまらず、運用・メンテナンスの体制を確立し、着実に成果を上げられているのはなぜでしょうか。業務要領書の運用を担当されている総務部長の小杉智子様に、改革着手当初の2017年から現在まで業務改革を支援させていただいているアメリスの代表取締役の橘高康朗、取締役の長久晶子、山内の3人がお話を伺いました。

プロフィール

高砂熱学工業株式会社

総務部長 小杉 智子 様(左2)

アメリス株式会社

代表取締役橘高 康朗(右1)

取締役長久 晶子(右2)

コンサルタント山内 裕司(左1)

※記事中の所属・役職名などは2024年05月取材時点のものです

12017年、
他社に先駆けて業務改革に着手

山内 高砂熱学工業株式会社様は2017年に業務改革に着手され、アメリスがその支援をさせていただきました。具体的な取り組み内容や成果については、以前のインタビューで伺いましたので、今回は業務基盤が整備された現在の状況や運用体制についてお話を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
小杉様

よろしくお願いいたします。

山内 現在は、業務改革当初に作成した業務要領書を社員の皆さんが確認しながら業務を遂行されていますよね。業務要領書がない時代も規程やマニュアルは揃っていたと思うのですが、改革前はどのように業務を進めていらっしゃったのでしょうか。
小杉様

「内規」と呼ばれるものが業務要領書の前身に当たるものでした。各部門や支店それぞれが使いやすいように決めたルールをそこに追記したり、それに伴う独自のマニュアルを作って運用しておりました。全社的な規程はありつつも、運用面では現場独自のルールに従うのが実態でした。ルールやノウハウの属人化も問題になっており、限られた社員にしかわからないルールが作成され、担当が代わる際に引継ぎがうまくいかず、新しい担当者がまた別のルールを作って運用するということが繰り返されておりました。

山内 業務改革当初、社内にはかなりのルールが存在していましたよね。
小杉様

内規の下に独自のルールも多く作られ、約80,000のルールやマニュアルが存在していました。そうした状態ではシステマチックに業務が進まず、部門によって業務プロセスが異なっていたため、異動で別の部門に行くと混乱を招き非効率でした。また、問題が起きた際に原因がわかりにくいというコンプライアンス上の問題もありました。

橘高 本社から業務文書が発信されると、再度それについて支店内で文書が発信されるということもあったそうですね。
小杉様

そうですね。支店ごとに独自の解釈によりリンクを追加し、「本社からこういう文書が発信されましたが、当支店ではこのような形で行います。」と通知するという事態が起きておりました。

2「時代の変化が見えていた」のではなく
「みんなで見に行く」という決断だった

橘高 コロナ禍を経た今、そして人手不足が深刻化する中でようやく業務基盤整備の重要性に気付かれる企業も多いですが、高砂熱学工業様は2017年の段階でその必要性に気付かれましたが、なぜ、早い段階で業務改革に着手されたのでしょうか?
小杉様

背景のひとつに、30年以上続いてきた基幹システムを変更することを機に、業務プロセスをすべて刷新しようという経営判断がありました。先ほど申し上げた通り、多くの独自のルールやマニュアルが混在しており、どこから手をつければいいか分からない状況でしたが、セキュリティの観点からも情報に関する仕組みを刷新して次の時代へと進むという点で良い判断であったと思います。

橘高 業務改革にはある程度のコストや負荷もかかりますが、それも考慮された上でのご判断だったのでしょうか。
小杉様

「何年も先を見据えて、ここでコストや負荷をかけてでも会社の仕組みを変えるべきだ」というトップの判断がありました。そして、その判断に必要な材料をきちんと執行側が用意し、執行側のトップがこのような形の業務刷新にゴーサインを出して、当時の社長が決断した、それがすべてだったと思います。

橘高 その意思決定ができるのは、創立100年を誇る御社の強さだと思います。業務改革や業務の棚卸にかかるコストや負荷は、この図(下図)の青い線のとおり、単年度では大きく見えますが、赤い線のように業務改革に着手せずにその場の対応を重ねていくと、長期的に見ると実は青い線のほうがコストを削減できます。2017年当時から、高砂熱学工業様にはこのような将来が見えていらしたということですね。
小杉様

7年前の私たちに“時代の先”が見えていたというわけではないと思います。みんなで「見に行こう」という決断をしたということです。

橘高 小杉様のお話からは、高砂熱学工業様の人財を大切にされる文化も感じます。創立から100年、独立系の会社としてトップを走られていたからこそ、オペレーションや人財に対し高い意識をお持ちですよね。
小杉様

私たちは建設業として物を作っているわけではないですから、オペレーションを担う人財を何よりも大切にしています。昨今、「人的資本」とよく耳にしますが、当社は長年に渡り社員の働きやすさや人財育成について考えてきたからこそ、業務改革にいち早く取り組めたのだと思います。

3外部パートナーの視点が
固定観念からの脱却に役立った

山内 業務改革の着手から7年が経った今、アメリスのような外部の会社を活用することのメリットをどうお感じでしょうか?
小杉様

当社は創立100周年を迎え「長く続けてきたこの方法が一番やりやすいのに、なぜ変える必要があるのか」という声もありました。だからこそ、2017年に業務刷新のために部門を立ち上げた際、専門的な知見を持ったアメリスさんに、時代の変化や、「今のマニュアルの仕組みは、これから業務を効率化させていく上での障壁になる」ということをはっきり言っていただけたことが大きかったです。その結果、現在の体制を整えられたことが、最大のメリットだと考えています。

長久 業務改革は内製できる、むしろ自分たちでやるべきことだと考えられる企業様もいらっしゃいますが、それは難しいと思われますか?
小杉様

そうですね。80,000ものルールが200に収まったことには私たちも驚きました(笑)。それをひとつの業務アプリ内に整理するというのは、社内のプロジェクトではとてもできませんでした。体制ができたからといって、業務要領書のメンテナンスが内製できたかというと、それもできなかったというのが実際のところです。

長久 専門的な部分は外部に任せて、社員の皆さんには自分たちにしかできないことに注力していただくという、仕事の住み分けですよね。社内の貴重なリソースをどこに費やすべきかという判断が、人財難の時代にさらに重要になってくると思います。
小杉様

おっしゃる通りですね。これほど業務が複雑化、多様化している中では、専門的な部分は専門の方に任せたほうが社内の業務が円滑に進むと実感しています。今の時代そうした方法を選ばなければ、企業としての生き残りも厳しいのではないかと思います。

4「全社統一のルール運用」で
業務プロセスが効率化

山内 業務基盤整備や業務要領書の運用については、どのような点でメリットをお感じでしょうか?
小杉様

会社という組織にとって、共通するルールのもとに業務を遂行するのは大前提だと考えています。私たちは今、新卒採用だけではなくキャリア採用にも注力しています。社員の構成、業務内容や関連法律が変わっていく中で、全社が同じルールに基づいて業務を行うことがコンプライアンスの観点からも欠かせません。2024年4月からは、建設業に対しても時間外労働の上限規制が強化されました。統一されたルールの下で業務を行うことは、効率化や労働時間の短縮の観点でも重要だと思っています。

長久 現在の体制に対して社員の方々の反応はいかがですか?
小杉様

利便性が上がったという声が多いです。業務改革前は、データベースに保管された膨大な量のルールの中から業務に必要なマニュアルを探す必要がありましたが、現在は業務アプリで検索すればすぐに見つけられます。また、発信文書にも「業務要領書のここを参照してください」とリンクを貼り、より正確な情報発信ができます。業務要領書の検索がしやすい環境が整っている上に、情報共有の際には文書を読むという文化も醸成されておりますので連絡が漏れるという事態も防げます。

山内 経理業務のシェアード化も進んでいるそうですね。そこに、業務要領書がお役に立てている部分はありますか?
小杉様

支店ごとに行われていた経理業務の一部を集約するプロジェクトを効率化のために進めております。社員や派遣スタッフなどのメンバーは業務要領書を参照しており教育にも役立っています。今後は、全社的な教育でも研修資料内にリンクを貼るなどの方法で業務要領書を活用したいですね。

5業務要領書で
内部統制やISO対応もスムーズに

橘高 この一連の業務改革では、内部統制関連のプロセスにも変化があったそうですね。2017年以前は、内部統制のためにどのような資料をご用意されていたのでしょうか?
小杉様

内部統制のための資料として業務に関するルールとは別に、フロー図、業務記述書、RCM(リスクコントロールマトリックス)を作成しておりましたが、業務改革プロジェクトで整備した業務要領書は、内部統制のために必要なこれらの情報を網羅しています。

山内 財務関連の業務要領書の本文に、財務報告に関わる内部統制リスクコントロールがどこにあるかを明記されたり、手続きのフロー図の該当箇所に記号をつけるなどして、内部統制への活用を踏まえた文書を作成されました。実際に業務要領書は、内部統制業務に具体的にどのようにお役立ていただいておりますか?
小杉様

内部統制のためだけの資料を新たに作る手間がなくなりました。結果的に、より業務の実態に即した内部統制資料を準備できるようにもなりました。

山内 監査についても、監査法人の方に業務要領書ナビを直接確認していただく形で活用されているそうですね。
小杉様

そうです。ISO関連の文書も別途作成することなく業務要領書で対応ができます。支店ごとに対応していたISO関連業務を一本化できたことも成果のひとつです。

6業務改革の効果を最大化する
運用とメンテナンス

山内 業務アプリとして導入いただいた業務エントランスは現在、アクセス数がひと月に2万4000件ほどで、多くの場面で活用されているのがわかります。仕組みを浸透させるために総務部様の方で工夫されていることはありますか?
小杉様

ただ業務基盤を作って満足するのではなく、いかに使ってもらうかが大事だと考え、浸透に向けて取り組んできました。業務要領書ができた当初から、各部門に対して、何かの通達を発出する際には必ず業務要領書へのリンクを貼るように伝えています。業務要領書に改正があった際も全て本社から通知しておりますので、社員はこまめに確認しているようです。変更内容をわかりやすくするため、変更点を必ずサマリーとして追記するようにしています。時には、支店からの問い合わせや内容についての指摘を受け、業務要領書を修正することもあります。

山内 改正をアナウンスされるだけでなく、改正があることを事前にお知らせされているそうですね。
小杉様

2週間前にお知らせしています。ルールが変わったことを社員が知らないというのはガバナンス上で問題となりますから、担当部門が正確に知らせる仕組みを確立しております。ルールを守ることは、企業のリスクに対処するための重要なファクターなので、それを周知する体制の運用が会社を存続させる中で重視すべきポイントのひとつだと考えています。

長久 企業が目指すべき姿として理想的ですね。
小杉様

とはいえ、運用は大変な面もあります(笑)。ただ、今の体制が確立できたのは、業務エントランスという強固な業務基盤の上で運用ができているからこそだと思っています。「ルールやマニュアルがあちこちに点在しているという状況では業務フローをしっかり把握できない」とこの業務に携わる中で強く感じました。

山内 業務要領書を読んだ現場からの要望や指摘で内容が改良される良い循環ができているのですね。こうしたメンテナンスの体制は、なぜ浸透したのでしょうか?
小杉様

運用開始の際に本社の各部門の担当者を集めて「業務要領書の定期的な見直しが必要だ」と伝えたところ、業務の負担増を心配する声もありました。ただ、これをメンテナンスすれば日々の業務が楽になります。各担当者も運用の中で業務要領書の不備による業務の滞りを防げたり、現場の方に的確に指示を出せるというメリットに気付けたのが大きいと思います。

山内 総務部様では、体制の浸透のためにどのような工夫をされているのでしょうか?
小杉様

定期改正の3ヵ月前に「間もなく定期改正があるので準備をしてください」と通知をしています。業務要領書は100本を超えており、毎回これらの殆どに改正が発生することを考えると、当初は「業務要領書を一度掲載しただけで終わってしまうのではないか」という危惧もありました。が、準備も含めて業務に組み込む工夫をしたところ、定期改正で最新の状態にメンテナンスできるというサイクルが自然とできあがりました。アメリス様にはコンサルだけでなく、その後の運用面で伴走いただいていることも大きいです。私たちが気づかない部分も含めて、丁寧にメンテナンスしてくださっているので感謝しております。運用担当者としても全社でここまで業務に対する意識が確立したことに驚いております。それぞれの部門が業務に正面から向き合い「良くしていこう」という心意気が根付いたのが、この仕組みを導入した最大のメリットだと考えています。

山内 そう言っていただけて本当に嬉しいです。涙が出そうです(笑)。
小杉様

業務について参照する先の情報が最新のものになっていますし、現場からの内容のチェックも入って不具合も修正できる、そうしたPDCAが自然にうまく回っております。良い業務要領書を作っていただけたので、あとは内製化できるだろうという意見もあったのですが、現時点で運用・メンテナンス体制が円滑に回っていることを考えると、やはり専門家の皆さんにお願いしてよかったと思います。

山内 本日は貴重なお話をありがとうございました。

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