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中間管理職板ばさみ相談室

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Q53
「良い部長」になりたいですが、
ついつい口を出してしまいます。

  • 2025-11-17
  • 情報システム部長(50代)

私は1年前、急遽海外赴任となった同期の後任として、情報システム部長に就いております。ITやAIに詳しく部下からも人気だった前任と違い、私は長年営業畑であり(最年少で営業部長になりました)、ITシステムやAIは詳しくありません。

社長からは会議で会うたびに「お前ならできる」と期待の言葉を掛けてもらうのですが、部の風土が営業部門とは真逆の為、正直なところ結果を残せるか不安です。

この1年間は、日常業務の運用は部下に任せ様子を見つつ、極力現場の皆で決めてもらうようにしながら進めてきました。トップダウンではなく、皆が自分達で決めながら進めたほうが納得感も高く、仕事がやりやすいだろうと思ったからです。しかし実際は、ついつい皆で合意形成した企画やアウトプットに対し口出しをしてしまい、「それなら部長がトップダウンで決めて欲しい」と言われてしまうことがあります。

今の時代、「パワハラ」や「頭ごなし」と受け取られるマネジメントは避けたいのですが、専門知識がない中でどこまでアウトプットに口を出してよいものでしょうか?

口を出し過ぎて部下から嫌われたくないのですが、一方でレベルの高いアウトプットをいち早く社長に持っていって、営業部門の時のように、社長にまた認められたいという焦りもあります…。

A53
あなたが言う「良い部長」は、会社にとっての
良い部長ではありません。

先ず、あなたは前任者がITやAIに詳しく、部下にも人気があったと仰っています。前任者は素晴らしい部長だったと思います。ただ、あなたは部長として1年を経ています。前任者と比較していること自体、あまり意味はないのではと思うのですが……。

「あなたはあなたらしく、あなたのやり方」で職務を全うする事が大事だと思います。つまり、あなたの個性を出すことが重要です。

きっと、あなたの良い面が出て部下にも支持される、信頼される部長になるでしょう。何故ならあなたは社長に期待の言葉をかけられ、部下との関わり方についても一生懸命に考えているからです。

<部下でも社長でもなく、仕事の成果にフォーカスする>

さて、本題に入りたいと思います。あなたは「良い部長」になりたいと仰っていますが、一体、あなたが言う「良い部長」とはどんな部長を言うのでしょうか?

文面からすると、トップダウンではなく部下に仕事を任せる。その際、合意形成をした企画、アウトプットに口を出さない。

「パワハラ」「頭ごなし」は論外ですが、あなたは口を出し過ぎて部下から嫌われたくない。しかし、レベルの高いアウトプットをいち早く社長に報告して認められたいと述べられております。

ここで問題なのは、「部下に嫌われたくない」とか、「社長に認められたい」とかの意識です。良い仕事をするためには、部下に嫌われようが嫌われまいが、やるべき事を断固成し遂げることも必要な時があるのです。

つまり、部下に好かれる、嫌われるという部下に迎合する考えではなく、いかに部下とともに立派な仕事を成し遂げるかということにフォーカスすべきです。また、社長に認められたいと述べておられますが、誰が認められたいのでしょうか?

部長(自分)が認められたいという意識ではダメだと私は思います。部が認められる。部下が認められる。結果として、部長であるあなたが認められるのが筋だと思います。

嫌われるのは部下の手柄を認めず、自分の手柄にしようとすることです。常に部下の成果を認めてあげましょう。

<大所高所からの視点で部下を導く>

また、専門知識がない中でどこまでアウトプットに口を出してよいものかということですが、あなたの言う「良い部長」を目指すためには、部長としてリーダーシップを発揮して、部下をして仕事に邁進させることです。

その場合に専門家でもないあなたがよく分からない専門分野、技術面にまで口出しをしてしまうのは、良いとは言えません。

大事なことは、専門分野に秀でている部下を信じて任せることです。部長だからと言って分かりもしないことに口出ししてはいけません。

ただ、専門家、技術者と言われる人達の中には、その道には人以上に精進しているのですが、往々にして狭い範囲にのめり込み、大所高所から会社全体からの視点に欠けることがあります。

そんな時に部長としてのあなたの視野の広さ、見識が生きると思います。そんな管理者、リーダーとしてのアドバイスを与えましょう。

口出しすることが悪い訳ではありませんが、専門分野に精進している部下のやる気を削ぐような口の出し方は慎んだ方が良いでしょう。

ITやAIに詳しくないにも拘らず情報システム部長に抜擢されたということ。あなたに対して社長の次のような何らかの期待があると思われます。

  1. IT、AIなど幅広い知識を学ばせつつ、あなたの将来の活躍に期待
  2. 営業部長などで培った見識を生かし、情報システム部を大所高所から指導して欲しい

等々。

社長の補佐役として、部長のリーダーシップの発揮に期待していると思います。情報システム部長として、いかにリーダーシップを発揮するか、を考えて欲しいですね。

<指揮の要訣(けつ)>

本質問は、「部下がいかにやる気を起こしてフォロワーシップを発揮してくれるか、部長としてのあり方を問われている」と解しても良いでしょう。部長としてリーダーシップを発揮するための組織的活動の基本的一例は次の通りです。

<リーダーシップを発揮するための組織活動の基本例>

  • 部下に指針(目的、目標、大綱など)を示したらあとは任せる
  • 中間段階(主な結節時)で報告を求めて指導する

仕事の手順(サイクル)を簡単に述べると以下の通りです。

<仕事の手順>

この際、部下に嫌われたくない等の考えを捨てることです。

以下に私が陸上自衛隊で学び実行したことに「指揮の要訣(けつ)」というものがあります。それは以下の通りです。

<指揮の要訣>

指揮の要訣は、部下(指揮下部隊)を確実に掌握し、明確な企図のもとに適時適切な指示(命令)を与えてその行動を律し、もって部下(指揮下部隊)をしてその任務達成に遭進させるにある。この際、部下(指揮下部隊)に対する統制を最小限にして、自主裁量の余地を与えることに留意する。

また、部下(指揮下部隊)の掌握を確実にするため、①良好な統御、②確実な現況の把握、③実行の監督は特に重要です。

部長であるあなたは、この指揮の要訣にあるように、①適時適切な指示(目的、目標、大綱など)を示すこと、②部下に自主裁量の余地を与え、むやみに口出しをしないことなどに心掛けて、細かいことまで立ち入らず統制を最小限にして欲しいものです。

この様にしてあなたは部長としてのリーダーシップを発揮して部の目標を達成するために適切な指示、指導を与え、部下のフォロワーシップ発揮を容易にして、組織的に楽しく仕事に邁進することが出来るでしょう!!

※単に口出しをしないとか部下に嫌われないことではなく、部としてやるべきことに、部が上下一丸となってそれぞれの地位、役割を明確にして総合力を発揮したいものです。これが「良い部長」の役割だと思います。

あなたは、部長としてのあり方を模索しつつ、部下のことも考えていらっしゃいます。そのこと自体がすでに「良い部長」と言えます。

どうか以上のようなことを参考にされて情報システム部長として自信を持って今まで通り頑張って下さい。

今回のまとめ

  • 前任者との比較をせず、成果に焦点化し、任務達成を第一とする。
  • 専門分野の口出しは避け、大所高所からの見識で部下を導く。
  • 部下に嫌われたくない等の意識を捨て、部が一丸となって目標達成するためにリーダーシップを発揮する。

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回答者: 呑田好文

元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師

暑い暑い夏が終わり、やっと秋の訪れかと思ったら急に寒くなったりします。どうか季節の変わり目、ご自愛下さい。美味しい秋の味覚(魚、野菜、果物など)も味わいたいですね。

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