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Q54
部下からは「抽象的な目標」しか出てこず、
リーダーである私は「指導方法」が分かりません……

  • 2025-12-17
  • 部長職(40代)

部下からは「抽象的な目標」しか出てこず、リーダーである私は「指導方法」が分かりません。この現状にとても悩んでいます…

私は事業開発部門の部長です。部下は優秀なメンバーばかりで、各自が自律性と専門性を持って仕事を進めています。

当社では、人事評価の基盤として、四半期ごとに目標管理シートの提出を全社員に義務付けております。今般、人事評価制度が大幅に変わり、役員から「部下の具体的な貢献を公平・正当に評価せよ」と強く求められています。

しかし、部下が提出する目標は、

「当社の理念に沿った事業を企画し部門に貢献する」

「部内の業務効率化を促進し生産性の向上に努める」

といった抽象的なものばかりです。

私からは「具体的な数値・期限・達成基準を入れてください」と指導しますが、部下からは「私たちの事業開発は、営業のように売上や件数で測れなく、定量的な指標で示すのは難しい」と言います。

そもそも、私が目標の与え方や評価の仕方が分かっておりません……。

成果を公平・正当に評価するためには、目標の曖昧さを許容できないことはよくわかりますが、当部門のように具体的な数値設定が難しいような場合、どのように目標の立て方を指導すればよろしいでしょうか。

A54
目標設定は、リーダーと部下の共同作業である

部下からは「抽象的な目標」しか出てこない。リーダーは目標設定のための部下の「指導方法」が分らない。

それにもかかわらず、人事評価制度を大幅に変更し、部下の具体的な貢献に対し公平・正当な評価を求められ、全社員に目標管理シートの提出が義務づけられている。よくある悩みだと思います。

以下、基本的なことから確認して行きましょう。

いかにこの目標管理シートを有効かつ実効性のあるものとして使用するかが重要です。

このため、目標管理シートを記述する本人(部下)と指導するあなた(上司)が、いかに一体となって管理シートを作成するかがポイントになります。

そこで、先ず、そもそも目標管理シートは何のために作成するのでしょうか。

目標管理シートの目的は、ズバリ、個人の成長を促すとともに組織の成果を上げるためです。

つまり個人の目標と組織の方向性を一致させることです。

個人と組織のwin-winの関係を作ることになります。

部下は目標を「見える化」することで、主動的に行動でき自己成長を図ることができます。

上司は部下の業務の進捗状況を把握して、より効率的な指導と公平・正当な評価を行いやすくなります。

以下、目標管理シート作成の目的とその効果についてまとめると次のとおりです。

  1. 個人の成長と意欲の向上
    • 具体的な目標を設定することで、自分が何をなすべきかが明確となり主動的行動につながります。さらには、課題の発見や問題解決能力の向上まで期待できます。
  2. 組織目的と個人目標の一致
    • 応々にして個人は個人、会社は会社となりがちですが、個人の目標と組織の方向性を一致させ、個人の目標を追求することが、組織の目的達成に寄与するという仕組みを構築することが極めて重要です。
  3. 上司の部下指導を容易にする
    • 上司は部下の目標に対する進捗状況を適時確認し指導できます。
  4. 評価が公平かつ客観的にできる
    • 評価はなかなか難しいものです。そのためには、目標管理シートに設定された目標とそれを測る評価基準(何を達成すればどの評価になるのか)に基づき、客観的で納得感のある評価でなければなりません。つまり、評価の公平性が担保され、社員の納得感が高まります。

以上、目標管理シートの目的やその効果などについて述べましたが、記入者、指導者(リーダー、部長等)共にその趣旨を理解しておかなければ、目標管理シート記入の意味がありません。

さて、まずは本質問の中心とも言うべき部下の提出する目標が抽象的なものばかりということについて以下述べたいと思います。

抽象的な目標ばかりが出てくるのは何故でしょうか。

恐らく具体的な目標設定の仕方が分らないか、あるいは目標管理シートを書くことを軽視しているのではと思います。

抽象的な目標を分析して具体的なものに表わして行動・実践に結びつけることが、目標設定においては重要なことです。

抽象的なものばかりしか出てこないのは、一言で言うならば分析不足以外の何ものでもありません。

でも、その分析の仕方がわからないということでしょうか。

公平・正当に評価するためには、具体的な行動や数値目標で表わせたら簡単ですが、実際にはそうはいかないと思いがちです。

例えば「当社の理念に沿った事業を企画し部内に貢献する」とありますが、これを次のように考えてみましょう。

  • 理念に沿った事業とは何かを細分化して分析する
    • 私たちの事業は誰の何の課題を解決するのか、それをどのように行い、どんな価値を提供するのか等
  • 部内に貢献するとは何かを細分化して分析する
    • 部としてのミッションはなにか、誰に対し、いつまでに、どのような情報を収集し加工して決定するのか。また達成すべき数値はなにか等

この分析ができないから具体的になっていかない訳です。

抽象的なものを分析して具体的なものに落し込む作業が、目標管理シートであり、また「部内の業務効率化とはなにか、生産性の向上とはなにか」とありますが、それを分析することが目標管理シートですから……。

これらの分析ができないのであれば、上司と共に一緒になって考えることです。あとでお伝えしますが、それが上司の責務です。

この分析ができなければ物事は始まりません。分析をすることにより具体的に達成すべき目標(必成目標)と、達成することが望ましい目標(望成目標)を出して、その内容的、時期的優先順位を明らかにします。

そして、それぞれの目標を達成するために、自分がその部内に占める地位・役割を明らかにして、何を、いつまでに、どのように行動すべきかを具体化する。

この際、数値に落し込めるものは極力数値で出す。どんな抽象的なものも必ず具体的な行動、数値に落とし込めるのです。

もし、抽象的なものを具体化することができないとすれば、これは、すべて私の言うところの「任務分析」の不足によるものです。

目的から目標へ、つまり、何のために何をするかを具体化していきましょう。

具体化できないものはありません。これを肝に命じておきましょう。

次に、リーダーは目標設定のための部下の「指導方法」が分らない、これについて回答したいと思います。

上司の指導は、目標管理シートの記入時における重要事項です。

ここでの上司の役割は、部下に目標を与えるのではなく、分析を通じて部下が目標を見える化できるように支援することです。

すなわち、目標設定の場は、上司と部下との重要なコミュニケーションの場であると捉える必要があります。

先ず、個人に目標管理シートを書かせ提出させます。

この提出されたシートに対して上司はその記入した意図や目的などをしっかりとヒアリングして、部下の考えやアイデアを引き出し、またその目標が適切かつ妥当であるかなどを話し合い、その結果をもとに再提出をさせます。

さらに出てきたものについて指導すべき事項があれば指導して、本人および上司共に十分納得のうえ、目標管理シートを完成させていきます。

これだけの十分なコミュニケーションを図ることにより、実効性のある具体的な目標が決定されるでしょう。

これらすべての営みが「部下への指導」なのです。

勿論、シート完成後の進捗状況、達成状況の確認は不可欠のものです。

目標管理シート記入時における「まとめ」としては、

  • 部下は「上司を信頼して、上司と一体となって自己の成長を図り、組織目的に寄与する」ことと自覚することが求められます。
  • そして、なによりも上司は「部下の成長を支え、その成長を促すために親身になって指導する心構えこそが最も重要である」と心得ることです。

本質問は以下により、解決を図れると信じています。

  1. 目標管理シートの目的や効果を理解します
  2. 任務分析を理解して、抽象的なものを具体化する能力を養います
  3. 上司と部下のコミュニケーションにより目標管理シートを作成します

どうか、目標管理シートの重要性を認識されて、個人目標と組織目標が一致するよう作成して下さい。

その際には評価基準に照らして目標管理シートを活用されますようにお願いします。

今回のまとめ

  • 個人の成長を促し、組織目的に寄与する
  • 抽象的目標を具体化するため任務分析を行います
  • 部下との重要なコミュニケーションの場です

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回答者: 呑田好文

元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師

今年も残りわずかとなりました。新年の抱負などを考えている方も多いと思います。来年2026年(令和八年)は丙午(ひのえうま)、情熱やエネルギーに満ち、勢いのある年とされます。冷静な判断のもと、行動力を高め、新しい挑戦を始めましょう!

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