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Q38
資料がバラバラで困っています

  • 2024-08-19
  • 金融業 課長(40代)

金融業の会社の本社で課長として勤めています。ここ数年で取り扱う資料の大部分が紙から電子に移行していることもあり、整理方法について具体的に支店に指示を出していますが、いつまでたっても支店毎に資料の保管・保存方法がバラバラで、外部監査の受け入れや異動者・新任者の立ち上がりの遅さが問題になっています。

整理できていない支店の担当者に理由を聞くと、どうしても現場業務優先になってしまい、整理の時間がない、と言っています。今後の業務効率向上を考えるとどこかで覚悟を決めて、本社から資料整理に時間をしっかり取るよう指示をするしかないと思うのですが、人員も厳しいうえに、支店長はたかが資料整理、と思っている様子もあります。整理できていない支店に対して、どう説得すればよいかアドバイスをいただけたら嬉しいです。

A38
指示とは実行を命じるもの

資料がバラバラで困っているとのことですが、ここでいう資料とは何をいうのでしょうか。
原議書などから規則類・規程類まで含むものでしょうか。
資料の整理というからには、「資料」とは何かをはっきり示し、資料整理の意義・目的そしてその重要性・必要性を明確にすることから始めなければなりません。整理ができていない支店についてはそもそも資料整理の重要性が分かっていない可能性があると思います。資料(情報)こそが会社の財産であり、必要な時に必要な情報が取り出せるようになっていて初めて資産と言えますので、そのために整理の必要性があるということをしっかりと伝えましょう。
そして整理の責任者、整理の要領(保存、保管および保管場所等)については、実務が分かっている中間層(マネージャー等)が設計して規則化(マニュアル化)し、上司(部長)が指示するのが良いと考えます。いわゆる統一の原則です。
そういうルールができた(あるいは元々存在している)という前提で以下、回答を考えていきたいと思います。

まず、整理方法について具体的に指示を出しても支店において実行されていない。保管・保存方法もバラバラとのこと。指示を出しても実行されないのは何故でしょうか。これが問題ですね。原因を考えてみましょう。
本社からの指示が軽視されているか無視されていると考えられます。これを改めなければいけません。指示が出されてもやらなくても良いという風潮が社内にあるのでしょうか。これでは指示の意味がありません。指示を社長名(あるいは部長名)で出して権威あるものにする必要があります。
指示というのは実行を命じるものであり、指示を受領した支店等は忠実に実行する責務があります。もしそうでなければ、組織的活動はできなくなります。今回の場合は、資料整理の実行を命じることが「指示」です。ここは資料整理の重要性に鑑みて、心を鬼にして資料整理の実行を命じることが重要です。
支店によってはできているところもあるということですので、できている支店とできていない支店を公表するのも一案かと思います。

二つ目に、整理できていない支店の理由として、現場業務優先のため時間がないとのこと。
できない理由として、現場が忙しく、時間がないというよくあるものです。忙しく時間がないというのは決してできない理由にはなりませんし、できない理由にさせてはいけません。
「忙しい」「時間がない」と口癖のように言う人が多い会社は、極論すれば問題の多い会社と言えると思います。少し言い過ぎかもしれませんが、職場から「忙しい」「時間がない」という口癖を撲滅したいものです。
また、現場こそ最優先されなければならないという風潮が強すぎないかを再点検してみてください。私は現場を軽視している訳ではありません。現場重視を強調するあまり、本社機能が弱体化していないかを危惧するものです。
最近経済産業省から出されたCX(コーポレート・トランスフォーメーション)レポートでもコーポレート(本社)機能の重要性が述べられています。
日本企業はずっと現場重視で仕事をしてきたように思います。その結果として、ここ30年欧米に遅れを取り戦略不在に陥っているのではないかと思います。
本社が長期的、大局的に戦略を練り、現場(支店)が実行に移す戦術を考えるという構図が本来あるべき姿だと考えます。戦略の失敗を個々の戦術で補うことはできないので、会社全体としての戦略が重要なのです。本問題とは少しかけ離れたかもしれませんが、ご参考まで。

明治天皇の五箇条の御誓文にこんな言葉があります。
「旧来のろう習を破り天地の公道に基づくべし」
(これまでの悪い習慣を捨てて、何事も普遍的な道理に基づいて行いましょう、という意味。)

担当者の強い意志と情熱が人を動かすのだという信念をもって、粘り強くしっかりと指示を出していきましょう。

今回のまとめ

  • 資料(情報)は会社の財産であり、資料整理は重要な業務であることを周知する。
  • 指示というのは実行を命じるもので、受領した側には忠実に実行する責務がある。
  • 本社は大局的な戦略を練り、現場は戦術を考える。
担当者コメント

今回のお悩みの回答にも出てきた「CX」というワード。CXって何?という方はこちらをチェック

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回答者: 呑田好文

元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師

何事も自分事として考える癖が付いていると主体的な行動に繋がるのでいいですね。極論ですが、私は「雨が降るのも自分のせい」だと思っています。

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