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中間管理職板ばさみ相談室
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Q58
「終電まで頑張っているのに、なぜ評価が低いのか」
という部下に、どう接するか
- 2026-4-20
- 法人 部長 50代
いつも拝見しております。独立行政法人で部長を務めている50代の者です。今、ある部下(40代前半・Aさん)への対応に、夜も眠れないほど頭を抱えています。一言で言えば、「本人の自己評価と、組織からの評価が絶望的に乖離している」のです。
先日、人事部から「Aさんのパフォーマンスが著しく低い。部長から厳しく指導して、改善させてほしい」と強く言われました。実際、Aさんの仕事はミスが多く、進捗も遅れがちです。周囲のメンバーも彼のフォローに疲弊しており、組織としては看過できない状況にあります。
しかし、意を決して面談に臨んだところ、Aさんからは予想外の反応を受けました。
「私は毎日終電まで残って、必死に頑張っています! 誰よりもこの仕事に時間を捧げている自負があります。評価が低いなんて心外です。もしこれ以上不当に低評価をつけるなら、パワーハラスメントとして労働基準監督署(労基)に相談させていただきます!」と言うのです。
本人は「長時間働いている=仕事ができている」と信じ切っており、改善の余地を全く認めてくれません。一方で、人事部からは「上司である部長の指導力不足ではないか」とプレッシャーをかけられてしまいます。
正直なところ、今の時代、どのような基準をもって「仕事ができない」と本人に納得させれば角が立たないのか、その正解がどこあるのか、分からなくなってしまいました。
組織内の仕組みとして目標設定や目標管理面談はあるものの、実態は成果を並べて「加点」する方式ばかり。「減点」や「不足の指摘」が想定されていない制度の中で、部下育成の難しさを痛感しています。「自分はできている」と信じ切っているAさんに、私はどう向き合えば良いのでしょうか。
A58
「頑張り」は免罪符ではない。
明確なルールが、あなたを守る盾になる
なかなか厄介な問題ですね。
客観的に見てAさんは仕事も遅く、ミスも多い。パフォーマンスが著しく低く、周囲のメンバーもフォローに疲弊して組織として看過できない状況にあるとのこと。一方で、Aさん自身はというと、毎日遅くまで必死に頑張っていると自己評価が高く、改善の余地を全く認めず、低評価はパワーハラスメントとして労基に相談すると言う始末です。さて、どうしたら良いのでしょうか?
本質問の文面から判断しますとあなた(部長)の指導の限界、つまり話し合いでAさんを納得させて改善の方向に向かう可能性は低いようです。
指導するとすれば、Aさんに以下のことをはっきりと伝えましょう。そして指導記録を残して下さい。
- 仕事のミスを具体的に指摘して改善を要求する。
- 毎日終電まで頑張っている(時間を使っている)のと評価は関係ない問題であることを伝える。
次に、残業についてですが、そもそも仕事をやらせている(命じている)のはあなた(部長)です。Aさんの仕事の内容をあなた(部長)が把握して、何をいつまでにやるべきかを示し、Aさんが勝手に毎日終電まで残業することのないようにコントロールすべきです。毎日終電まで残業をさせること(残業をすること)自体、あなたに責任があります。
私は、残業は真に必要な仕事をその日までにやらなければいけない場合に上司の許可を得てやるものであると考えています。
また、評価についてですが、被評価者の自己評価は一般的に高くなる傾向にあります。他の人より自分はよくやっていると考えがちになります。人は自分に対して甘い評価をするものです。その時大事なことは、評価者は可能な限り数値データで客観的評価を心掛けることです。また評価基準に照らして、被評価者とよくコミュニケーションを取り、お互いに納得のうえで評価することです。
仕事の質は「メリハリ」で決まる
もう一つは、Aさんは終電まで頑張っている、長時間働いていると言っていますが、私の考えは極論ではありますが、仕事の出来る人とは、短時間で効率的な仕事が出来る人のことをいうのだと思っています。
仕事の出来ない人は長時間ダラダラと仕事をするのだと思ってしまいます。これは必ずしも全員に当てはまるわけではありませんが、サッサと仕事を片づけてサッサと帰りましょう。遅くまで仕事をすることは美徳ではなく、また自慢にもなりませんので……。
ただし、真に必要で残業を遅くまでやらなければいけない時は勿論あります。メリハリをつけてしっかりと仕事をして欲しいと思います。
暗黙の了解による残業、個人の意志による残業など各人の善良な判断に任されていることもありますが……。
しかしながら、Aさんのように目に余る場合は、指導して是正しなければなりません。毎日終電まで残業をやらせているのは会社の問題となります。
指導の根拠のため「マニュアル」の整備を
さて、この事案は、A社員が就業規則等に違反して、会社に著しい損失を与えかねない内容なので厳正な対応が求められます。簡単な口頭注意や指導で改善が見られるレベルではないようですね。
こうなると、「問題社員対応」として考える必要があります。「問題社員」」とはいろんな定義はあると思いますが、一般的には、以下のような状態に該当する社員といえます。
- 面談が必要で、かつ改善が見られない状態
- 上司の対応では困難で、指導で改善されない状態
- 解雇が必要なレベルの非違行為
※参照:業務要領書「問題社員対応業務」(豊島総合法律事務所&アメリス株式会社)
次のステップとして、「解雇相当の非違行為」に該当するかどうかを冷静に判断し、今後の対応を検討すべきです。
具体的には、就業規則等のルールや業務命令に対する明確な違反があるか、あるいはローパフォーマーとして業務遂行能力が会社の要求水準(最低限度)に著しく達していないか、という視点です。
まずは対象社員の状態を正確に把握してください。本件は、現場(部)の範疇に留めるべきか、人事部が介入すべきかの境界線にあります。 あなたの部内での解決を模索しつつも、人事部と緊密に連携し、組織として「A社員にどう対処すべきか」という最終的な意思決定を下すべき段階に来ているようですね。
弁護士等と相談して問題社員対応についてアドバイスを受けるのも良いでしょう。いずれにせよ、他社員と同様の公平な評価を行なうとともにA社員の理不尽な抵抗に対しては就業規則、法令に則って厳正かつ冷静に対応する必要があります。
この際に重要なことは、A社員の仕事の状況や言動、会社の指導とその対応など詳細に記録に残すことです。この種問題発生の未然防止及び発生時の対応として、問題社員対応の明確なマニュアルの存在が不可欠です。
そしてA社員のようなローパフォーマー社員対策をしっかり定義づけして、指導の根拠を持っていることが必要かつ求められることです。これが、「仕事ができる・できない」の基準となります。人事部としてもこの件については対応すべき問題です。
こうした事案において最も重要なのは、A社員の業務状況や言動、および会社側が行った指導の内容とそれに対する反応を、すべて詳細に記録として残すことです。
トラブルの未然防止や発生時の迅速な対応には、「問題社員対応」に関する明確なマニュアルの存在も欠かせません。A社員のようなローパフォーマーへの対策を具体的に定義し、客観的な指導の根拠(エビデンス)を保持することが、今の会社には強く求められています。
この「客観的な根拠」こそが、正当な「仕事の成否(できる・できない)」を分ける基準となります。これは現場だけの問題ではなく、人事部が主体となって取り組むべき喫緊の課題です。
おわりに、部下育成の基本について述べたいと思います。
部長等役職者は以下の視点で部下と向き合うことが重要です。
- 感情的、主観的な評価を排し、常に客観的で公正な評価を心掛ける
- 日頃から部下の言動、業務内容、心身の状態に配慮しつつ、問題の未然防止に努める
- 問題が発生した場合、客観的事実に基づき、早急に社員を健全な状態に戻す努力をする
- すべての部下に対して、その成長を促すことを第一義として長期的観点から指導を加える
- 職場の雰囲気を明るく保ち、健全な職場環境醸成に留意する
また、問題社員のみに注意を払うだけでなく部全体の状況に配慮することが、部下の健全育成には重要です。
いつも申していることですが、良く個々人とコミュニケーションを取り、信頼関係を築いて頂きたいと思います。
今回のまとめ
- 指導の限界を超えた事案については、問題発生として対応して詳細な記録を残すこと。
- 問題社員対応の明確なマニュアルを会社として作成し指導の根拠とすること。
- 深刻な事態となる前に専門家(弁護士等)に相談すること
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回答者: 呑田好文
元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師。
風薫る5月、新緑が目にしみる爽やかな季節となりました。世間では五月病という言葉も聞かれますが、見頃を迎えるバラ、シャクヤク、カーネーション、フジ、サツキ等々、百花繚乱の彩りに心躍る時節でもあります。この良き季節を、ぜひ存分にエンジョイしたいものです。
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