あなたの毎日の業務は「仕事」ですか?それとも「作業」ですか?
同じ業務でも、それをどのように捉えるかによって、その成果も自身の成長も大きく変わります。ただ指示通りに何も考えず、手を動かすだけでは「作業」で終わってしまいますが、そこに意味や価値を見出せば「仕事」へと昇華します。本コラムでは、「仕事」と「作業」の違いを明確にし、仕事をより充実させるための考え方を探ります。日々の業務に主体的に取り組み、自らその意味を考え、価値を生み出す「仕事」をしていきませんか?
1「作業」×「意味(価値)」=「仕事」
日々の業務において、私たちは「仕事」と「作業」を混同しがちです。しかし、この二つは本質的に異なります。
例えば、大阪城の石垣を作る石工の話があります。
その石工が、何も考えずただ石を積んでいるだけだとしたら、それは「作業」です。
一方で、別の石工が「自分は日本一の大阪城の石垣を作っている」と考えて石を積んでいるならば、それは「仕事」と言えます。同じ行動をしていても、そこに意味や価値を見出すことで、「作業」が「仕事」になるのです。「作業」をしている石工と、「仕事」をしている石工のアウトプットの差、石工としての成長スピードの差は、時間を経るにつれ加速度的に大きくなることでしょう。
弊社顧問でもある工学院大学小川雅准教授のnote記事 “「作業」×「意味(価値)」=「仕事」”でも、「仕事の本質を考えること」の重要性が説かれています。また、弊社の基本方針にも下記のような一節があります。
アメリス基本方針第23条(意味・本質を考える)
- 当社の役職員は、常に「仕事の意味」、物事の本質を考え行動する。
- すなわち当社の役職員は、仕事において常に「何のために行うのか、何故行うのか、他の方法はないのか、整理統合できないのか」等を問うことを習慣づけ、本質的な思考を培う。
プロとして、仕事において、「何のために行うのか」「なぜ行うのか」「他の方法はないのか」「整理統合できないのか」を問い続ける姿勢は必要不可欠です。単に指示されたことを何も考えず、「こなす」のではなく、組織の目的・目標に照らしてどのような意味があるのか、なぜ今行うのか、自分が果たすべき役割は何か、優先順位や状況判断は全体最適になっているか等、常に意識を巡らせ、自律的に思考し、思いを込めて行動することが、良い「仕事」を生み出すのです。
そのために、日々の業務を振り返り、自分へ次のような問いを投げかけることが重要です。
- 仕事が作業になっていないか?(意味を見失っていないか?)
- 作業を仕事としてできているか?(価値を見出せているか?)
- 作業を作業としてできているか?(効率よくこなせているか?)
また、日々の業務の中で、上司から頼まれた「仕事」を「作業」と捉え、忙しさにかまけて、それを他人に「作業」として、あまり考えずにこなすことで、「雑用」にしてしまっていることはありませんか。上司は「仕事」の依頼をしているにもかかわらず、最終的に「雑用」として「こなされて」しまっているのです。しかしながら、雑草という植物がないのと同じように、次の言葉の通り、雑用という仕事はないのです。
「この世の中に、雑用はありません。あなた方が、用を雑にした時に、雑用が生まれるのです」(渡辺和子著「あなただけの人生をどう生きるか」)
2「仕事ができる」とは何か
それでは、「仕事ができる人」とはどのような人でしょうか?
仕事ができる人と作業ができる人の関係性を考えてみましょう。
- 仕事ができる人は、作業もできる人です。
- 作業ができる人が、仕事もできるとは限りません。
- 作業ができない人は、仕事もできません。
仕事は個別の作業からなるプロセスの集合体です。つまり、作業は仕事の基本的な構成要素であります。仕事ができる人は、作業がなければ仕事が成り立たないこと、すなわち作業の重要性を深く理解し、基本的な作業能力をしっかりと身に付けているのです。仕事ができる人は、基本的作業能力を土台にして、「仕事の意味」、「物事の本質」を深く考え、多角的・長期的な視野を以て、自分の役割を果たすことで、組織に貢献することができる人材なのです。
では、仕事ができるようになるためには、どのような考え方が求められるのでしょうか。
これは前述の小川雅准教授のnote記事 “「作業」×「意味(価値)」=「仕事」”に、過去の偉人たちの言葉を引用して記述してあります。
- 「稽古とは、一より習い十を知り、十よりかえるもとのその一」(千利休)
- 基本をしっかり学び、応用を身につけても、最終的には基本に立ち返ることが大切です。
- 「素直な心」(松下幸之助)
- 周囲の意見を柔軟に受け入れる姿勢が、成長につながります。
- 「虚空よく物を容(い)る」(吉田兼好)
- 余計なこだわりを捨て、広い視野で物事を捉えることが重要です。
- 熟練者ほど基本に忠実であり、意味を知り尽くした上で作業を行います。そのため、一見すると単純な作業に見えることでも、そこには深い仕事の価値が込められています。
3まとめ
「仕事」と「作業」の違いは、単なる行為ではなく、その背後にある意味や価値にあります。意味を考え、理解し、目的を持って取り組むことで、単なる作業が仕事へと変わります。そして、仕事ができる人は、作業の本質を理解し、それを価値あるより良い「仕事」に変えることができるのです。
日々の業務の中で、私たちは「仕事」と「作業」をどのように捉えているでしょうか?「作業」を「雑用」にしてはいないでしょうか。常に素直な心を以て、謙虚に基本に忠実に業務に取り組むことが、真の「仕事」へとつながるのです。