企業で働く人の関心事のひとつが、50代以降の働き方です。日本企業では、会社で長く活躍してきた人材が50代以降に新天地で働くケースが珍しくありません。そんな経験や知見が豊富なビジネスパーソンは、組織を改革するための仕組み作りや新しいチャレンジの主導など、ベテランならではの仕事を任されます。しかし、新しいフィールドで十分に能力を発揮できない人もいるのが現実です。
そこでこのコラムでは、ベテラン人材が豊かなネクストキャリアを歩むために役立つ考え方や方策を解説。今までのキャリアと同様に、次のステージでも価値を生み続けたい管理職や、新たな分野でのリスタートに向けて準備をしておきたい人に役立つ「仕組み化」のポイントをお伝えします。
1キャリアを重ねた後の新天地、これからどう働く?
30代、40代と、企業の第一線で仕事をしてきた優秀な人材の50代からのキャリアは多岐にわたります。特に大企業では、セカンドキャリアで新しいビジネス領域での管理職を任されたり、関連会社に出向したりするのも一般的です。
そんな人材は新天地で、これまでの経験を活かしたベテランならではの活躍を期待されます。全く新しいプロジェクトを任されるケースや、重要な組織の再構築を委ねられるケース、または、組織の大きな課題解決を任されることもあります。
中には、具体的な業務ではなく、「このポジションで価値を発揮してほしい」という、大まかな期待と共に配属される人も。ベテランならではの課題に直面するのが、セカンドキャリアの特徴です。
2闇雲な取り組みは失敗を招く
企業で成果を上げてきた優秀な人材は、セカンドキャリアにも意欲的です。ただ、新天地で何から着手したらいいのか、具体的な方法がわからないために、せっかくの高い能力を発揮しきれないというケースも少なくありません。
価値を生み出そうと、短期的な打ち手に走ったり、闇雲に組織改革や新プロジェクトに取り組んだりすると、次のような失敗を招きます。
<失敗例>
- 新たな仕組みを構築するため、目新しいシステムの力に期待して高額なシステムを導入。しかし、実際の業務にマッチせず、現場で使われない。
- ニュースや書籍で紹介されている話題の方法を取り入れたものの、社内に組織改革の前提となる仕組みが整っていないため、成果があがらない。
- これまでの成功体験に基づき、過去に成果があったシステムやルールを導入。部署に合った方法に再構築することなく採用したため、実態にマッチせず浸透しない。
- 社内や社外に相談をせずに、独断で上記のようなシステム導入やルール作りを進めたため、現場に定着しない。
では、ベテラン層の企業人が次のステップでも価値を生み出すためには、どのような考え方や方法で業務に取り組めば良いのでしょうか。
3ベテランの活躍に欠かせない
「仕組み化」はどう進める?
ネクストキャリアにおいて大切なのは、組織の再構築のための「仕組み化」の考え方やステップを身に付けることです。
仕組み化に必要な考え方は、必ず、①課題→②打ち手→③リソースの順に取り組みを進めること。すぐに打ち手を探したりすることなく、この順序通りに進めることが基本です。
また、仕組み構築を進める上での最初のステップは、①最新の基礎知識を身に付ける、②業務を把握する、③企画を考える、④社内外で相談する、⑤企画を起案する の5つです。その主なポイントは次のとおりです。
- ①最新の基礎知識を身に付ける
- 仕事が回るための「仕組みの構造」を理解する。
- 20~30年の間の企業の事業拡大や、ビジネスに関わるルールチェンジなど、対応すべき「変化」の基礎知識を身に付ける。
- 最新の仕組みを実現する人材基盤、業務基盤について理解する。
- ②業務を把握する(課題)
- 基礎知識に基づいて、資料やコミュニケーションを通じて業務の全体像をつかみ、自分が関係する業務を列挙する。
- 列挙した業務に対して、①ルール・プロセス、②体制×教育、③ツール・システムの3つについてチェックを行って課題を抽出し、真因を考える。
- ③企画を考える(打ち手) ④社内外で相談する(打ち手)
- 真因を解決するための仕組みを企画する。
- 社内の関係者に、過去の経緯や社内情勢に関するヒアリングも含めて相談する。
- 社外の専門家に、真因の仮説から相談する。
- 企画の検討の際には、抽出した真因を本当に解決できるのかを熟慮する。
- ⑤企画を起案する(課題・打ち手・リソース)
- ①~④の結果をふまえて、課題、プロジェクト案、目的、内容、体制、予算などを含む企画書を書く。
このように、課題→打ち手→リソースという順番に従ってポイントをおさえて各ステップを実行することが、ベテラン人材の活躍や、新しいポジションでの成果につながります。
4仕組み化の方法を知れば50代こそもっと輝ける
ベテラン層の企業人が期待される「構築」は、自分がこれまで現場で培った「生きた」ノウハウやスキルを、誰もが使える仕組みとして書き起こすことです。ベテラン層になってからの新しい領域での業務の棚卸や構築には壁を感じるかもしれませんが、長い現場実務でも企画・構築の経験を重ねてきた人材にとっては、難しいことではないでしょう。20~30年にわたる経験を仕組み化に置き換えれば、ベテラン層ならではの価値を生み出すことができ、社内での評価も上がります。企業全体のCX(コーポレート・トランスフォーメーション)のムーブを起こしていくこともできるのです。
アメリスは、このコラムでお伝えした仕組み構築の基本から、その後の運用、浸透までを一貫してご支援しています。支援実績が豊富な専門家の手を借りて、50代だからこそのセカンドキャリアで、さらに一歩進んだ仕事をしてみてはいかがでしょうか?