中間管理職板ばさみ相談室
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Q39
残業ができず成長に不安
- 2024-09-17
- 建設業 支店課長(40代)
建設業の会社で課長をしております。会社として残業規制が厳しくなり数年経ちます。最近では会社の売り上げも厳しいことから、支店別に残業の状況が比較されるようになりました。それに伴い、支店内でも月間の残業時間が個人別に集計され、残業が多い人は部長から発表されるようになりました。
20代の部下からは、“残業したくてもできない”“時間内に自分なりに効率化して取り組んでいるつもりだが、他社でバリバリ働いている同期と比べてスキルが身についているのか不安”という声が聞こえてきます。自分たちが若い頃はがむしゃらに働いて、経験やスキルを身に付けてきたところもあり、確かにここまで残業を規制されるとそう思う部下の気持ちも分かります。とはいえ、自分の若い頃とは時代も変わり、支店別に比較をされてしまう状況では、部長に何か進言しても風潮は変わらないと感じます。部下の不安に対して、どうアドバイスしたら良いか、教えてください。
A39
人材育成の問題として創意工夫を
本質問は、会社の売り上げが厳しくなり、残業したくてもできない状況(残業規制が厳しい)の中で、時間内で自分なりに効率化して取り組んでいるものの、仕事のスキルが身についているのか不安ということですね。
この質問に答えるには、まず残業とは何か、残業の意義、残業の実施の可否の判断基準を明らかにする必要があります。
私は自衛官として37年、そして民間企業において17年働きました。自衛官時代は24時間勤務という意識でいつ何が起こるか分からない状況の中で、常に出動態勢を物心両面で整えておくことが常態で、もちろん労働基準法(労働三法)の適用がないため残業の概念がなく、命ぜられたら何時でも仕事に就いていました。
その後民間企業に就職し、様々な企業を見る中で、残業の意義、残業の実施の可否の判断基準が明確でないと感じることがありました。
残業とは会社(上司)に命ぜられて行うものです。つまり仕事が繁忙で勤務時間内(法定労働時間内)では終わることができず、またその日のうちに仕上げるべき緊急性、重要性、必要性、妥当性があるということが前提ですね。自分が残業したいので残業するというものでは当然ありませんよね。基本的に残業はするかしないかを自分で決めるものではないということです。
もし残業が必要な場合は上司に仕事の内容などをあらかじめ報告し、理解して頂き許可を得るのが基本です。但し、社内規程等により、例えば1時間までは無条件に残業を認めるというような定めがある場合は、この限りではありません。
残業時間については上記の他、
➀時間外労働を命じる場合には36協定を締結する必要があること
➁残業時間には上限規制があること
➂時間外労働には割増賃金の支払いが必要であること等
を理解した上で、以下の話を進めて参ります。
本当に残業できないという理由でスキルが身に付かないのでしょうか。私はスキルを身に付けるための残業はないと思います。
確かに以前は、残業を前提として圧倒的な業務量をこなす仕事人間が沢山いて、その結果として多くの経験ができてスキルが身に付いたのも事実です。しかし、今ではそのような風潮の弊害も出てきて、残業に対する法的な規制も厳しくなりました。
よって、経験、スキルを磨くために、残業規制をされるのは困るという発想そのものを改めなければならないと思います。
では、あなたは課長としてどうすれば良いのでしょうか。部下が時間内に経験、スキルを磨くための方法を考えましょう。つまり、残業の問題として解決するのではなく、部下育成、教育の問題として捉えて、他部署と連携して人材育成のための研修の在り方、方策を考えて会社全体として解決を図ることです。
半面、残業の基本的な考え方も教育していく必要があります。引き続き、時間内に最大限の効率を発揮する習慣を身に付けて欲しいものです。支店別・個人別に残業時間が集計され発表されることも一旦受け止めて、会社側は勿論、社員も残業を減らす努力をすべきだと思います。
まとめとして、あなたが20代社員へのアドバイスとして伝えることは、ありきたりですが以下の通りです。
- 向上意欲が高いことを褒めた上で、今の気持ちを忘れず努力を続けること。
- 残業によりスキルを磨こうとするのではなく、勤務時間内をさらに有効に活用し、勤務時間外でスキルアップを図るよう意識を変えること。
- 今の悩み(スキルの向上への不安)をさらに上司に伝え、皆でフォローしていく体制をつくり、会社として教育・研修制度を充実させるよう検討していくこと。
今の時代は学ぶ姿勢さえあれば、学ぶ材料は会社の外にも沢山ありますので、色々調べてみるよう本人にアドバイスすると良いと思います。課長であるあなたには、20代若手社員の意識改革とスキルアップのための創意工夫・施策を期待しています。
今回のまとめ
- 残業はするかしないかを自分で決めるものではない
- 残業ではなく時間外でスキルアップする方法に目を向けるようアドバイスする
- 会社の課題として、教育・研修制度を充実させるよう検討する
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回答者: 呑田好文
元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師。
何事も自分事として考える癖が付いていると主体的な行動に繋がるのでいいですね。極論ですが、私は「雨が降るのも自分のせい」だと思っています。
担当者コメント
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