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中間管理職板ばさみ相談室

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Q49
誰の意見を、どこまで聞けばいいのでしょうか?

  • 2025-07-22
  • 営業職 シニアマネージャー(40代)

金融業界で、担当部内のシニアマネージャーを務めております。私の直属の上司は「部長」なのですが、その横に「担当部長」「審議役」「参事」といった役職が不明確な方々が複数名います。

彼らの中には、会議などで接した際に役立つアドバイスをくださる方もいます。3人とも部長とほぼ同年代の50代ですが、部下はおりません。現場の業務に対して、豊富な専門知識や経験をもとに真摯に向き合ってくれる方もいれば、全く発言せず、意欲が感じられない方もいます。

先日、部をまたぐ新規企画を出すにあたり、部長に事前相談したところ、「担当部長や審議役の意見も聞かないと企画は通らない」「自分と担当部長は同期なので、うまく活用すると良い」と言われました。
しかし、直属の部長と異なるアドバイスを受けた場合、どちらの意見を優先すべきか判断に迷うので困惑しております。そもそも、全社的な組織図が存在せず、担当部長や審議役等の組織における明確な立ち位置が不明瞭です。私は、この人たちの意見をどこまで聞き入れるべきなのでしょうか?

A49
「指揮命令系統の遵守」が基本

現実によくある質問ですね。シニアマネージャーのあなたにとっては悩ましい問題だと思います。本質問への回答は、ズバリ「指揮命令系統の遵守」が基本です。と言いましても、会社の命運や人命に関わるような重大な内容ではないと思われますので、平たく言えば「直属の部長の意思決定に従うこと」です。

以下に詳しく説明したいと思います。
関係部課、担当部長、審議役と事前に調整し、あらかじめ意見を聞いたり、本案(新規企画)の趣旨を説明したりしておくことは良いことです。それらの方々から事前にアドバイスを受けることで、漏れを防いだり、これまで気付かなかった視点から考えたりできるので、あなたにとって非常にプラスになるでしょう。
本質問のように、指揮命令系統以外の役職不明確な方々がいる場合でも、豊富な専門知識や経験を活用しない手はありません。では、直属上司の部長と異なるアドバイスを受けた場合どうすべきでしょうか?基本は「直属の部長の意見を優先すべき」です。しかし、その前に「あなた(シニアマネージャー)自身」の意見をしっかり持つことが何よりも重要です。つまり、どちらの意見に従うべきかではなく、起案者である「あなた」自身の考えや意見はどうなのかが問われます。
さまざまな参考意見を聞いた後は、起案者である「あなた」の意見を、直属の上司である部長に具申すべきなのです。
[参照までに以下の記事もご覧ください:板ばさみ相談室番外編「補佐道①基本動作」]
そして、指揮命令系統以外の方々の意見は、あくまでも参考としての位置付けにあると認識しておきましょう。責任のない人たちの意見には、素晴らしいものがある一方で、無責任な意見も混じっているため、慎重に取捨選択してください。また、意思決定のプロセスを明確にしておくことも重要になります。

意思決定は一人のリーダーに任せるべき

ここで思い出すのが、1902年(明治35年)1月、多数の犠牲者を出した青森県八甲田山における雪中行軍遭難事件です(参照:新田次郎「八甲田山死の彷徨」、映画「八甲田山」)。
青森歩兵第5連隊の中隊長(映画では神田大尉)が雪中行軍の指揮官でした。しかし、その上司である大隊長(映画では山田少佐)が同行することになりました。この同行は事前に「部隊の指揮権を持たないこと」が確認されていました。しかし、天候の悪化に伴い、行軍中に山田少佐の不適切な干渉があり、中隊長はこれに抵抗できず、悲劇は防げませんでした。つまり、指揮権を持たない同行者(大隊長)が、本来の指揮官である中隊長の指揮権を勝手に奪い指揮する形になりました。指揮官である中隊長は上官に逆らえず、行軍はますます困難な状況に陥り、多数の犠牲者を出す結果になったのです。

こうした指揮系統が不明瞭な事例は日常茶飯事、よくあることです。指揮系統を明確にし、指揮権の所在を明らかにしておくことは極めて重要なことだと言えます。
この件から学ぶべきは、最終的な指揮官・リーダーの責任の重さです。本質問のケースでは、部長が最終責任者ですから、あくまでも部長の指揮に従うべきです。もし、困難な判断に遭遇し、担当部長や審議役といった指揮命令系統外の判断に委ねてしまうと、部長は結果に対する責任を負えなくなる可能性が生じます。
指揮権を有する部長の責任と権限の重さに鑑み、あなたは適切な意見具申をして部長の意思決定を補佐してほしいと思います。(注:本質問と八甲田山雪中行軍の事例が必ずしもマッチするものではありませんが、指揮権と責任という観点から「八甲田山」を取り上げたものです。ご参考になれば幸いです。)
意思決定は一人のリーダー(本質問では部長)に任せるべきで、担当部長、審議役の意見はあくまでも参考として尊重しましょう。そして、部長の補佐者として起案者のあなたが、自身の考えで信念を持って起案しましょう。
また、質問にあるように全社的な組織図が存在しないこと、および各部署の職位機能組織図(誰がどの位置付けで、どんな任務を持っているかを図で表したもの)がないことも、大きな問題ですね。早急に各人の果すべき役割を明確にしましょう。これも「見える化」の一環で、組織的活動を行う上で非常に重要なことです。

以上、今回もよくあるお悩みだと思います。しっかり筋の通った仕事を心がけて下さい。

今回のまとめ

  • 多くの意見を参考にすることは良いことだが、基本となる指揮命令系統は遵守すること
  • 補佐役、起案者は自分の考え、意見について信念を持って具申すること
  • 「見える化」して組織的活動を行う上で、組織図を作成することは不可欠

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回答者: 呑田好文

元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師

猛暑が続いています。体調管理には十分気を付けましょう。そのためには、食欲、睡眠は重要です。美味しいものをたくさん食べて、ゆっくり休みましょう。 常に明るく楽しく頑張りたいものですね。

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