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中間管理職板ばさみ相談室
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Q50
社長から報告がないと怒られる
- 2025-08-18
- 保険業 部長(40代)
弊社の社長はいつも私に「あれをやれ、これをやれ」と矢継ぎ早に指示を出してきます。その都度、私なりに周到な準備と完璧なアウトプットを目指し、懸命に動いているつもりです。それなのに、「全然進んでないじゃないか、一人で抱えずもっと人を使って進めろ!」と怒られてしまいます。
「ちゃんとやっているのに…」と、心の中では悔しさが込み上げてくる毎日です。自分自身で責任を持って質の高いアウトプットを作り、それを報告したい私と、とにかくスピードを求める社長との間で認識の乖離が大きく、この板挟み状態に心身ともに疲弊しきっています。
このままでは、社長に怒られるばかりか、自分の仕事の質まで落ちかねないと思っています。
どうすれば、私が真剣に業務に取り組み、努力していることを社長にちゃんと理解してもらえるでしょうか?
A50
あなた(部長)が社長の意図、期待、要求に応えるべき
この相談を一読して感じたことは、社長(トップ)としてのリーダシップの取り方、及び社長の補佐者としてのあなた(部長)のフォロワーシップのあり方の基本を学ぶことで十分解決できる問題であるということです。
社長の求めていることとあなた(部長)の頑張っている立場はよく分かりますので、私は何とかこの問題を解決したいと思う気持ちで一杯です。
矢継ぎ早に指示を出してスピードを求める社長と、周到な準備と完璧なアウトプットを目指しているあなた(部長)との乖離、いわゆる認識のズレはよくあることです。
社長からしたらまだまだ業務のやり方に不満がある。
部長からしたら真剣に頑張って要求に答えていると……。
ズバリ結論を申し上げます。「あなた(部長)が社長の意図、期待、要求に応えるべきです」
何故なら、あなたは社長の補佐者ですから、社長の意図に添った業務遂行をしなければなりません。
あなたのやりたいように仕事を進めるのではなく、社長の意図・期待・要求に添った仕事を進めるべきなのです。
それが補佐者として重要な基本的心構えです。そうすればあなたの努力は認めてもらえる方向へと転回していくでしょう。
社長の考え方を変えることはできません。この問題を解決するための考え方のヒントをいくつか述べて参考に供したいと思います。
<問題を解決するための考え方のヒント>
先ず社長(トップ)の一般的な特性を理解することです。勿論、それは社長の性格・個性などにより異なります。
ここで重要なことはあなたが社長の仕事のやり方などの特性を把握して補佐をすることです。
- 社長は立場上、あなた(部長)よりも会社に対する責任を背負っているので、誰よりも真剣に業務のことを考えている。
- 一般的に社長には、仕事を先手先手と次々に進めていくためにスピードを求める方が圧倒的に多いです。(それがせっかちに見えることもあります)。でもせっかちが悪い訳ではありません。
- スピードを求める余り、「拙速を尊ぶ※」ことが多い。完璧なアウトプットを目指して遅れるよりも、完璧でなくてもスピードを重視するトップは多い等々。
※「拙速を尊ぶ」
「孫子の兵法」の一つで、作戦を練るのに時間をかけすぎるよりも、少々拙い作戦でもすばやく行動して勝利を得ることが大切である、という意味から、完璧でなくてもスピードを重視してリーダーを補佐すべきということ。
次に重要なのがあなた(部長)の社長に対する補佐(報告含む)のあり方です。
その基本的に重要なことを以下述べますので参考にして欲しいと思います。
- 簡明の原則:伝達の迅速と受領者の理解を容易にするため簡明に必要な事項を漏れなく報告する。
- 適時性:報告は時宜に適すること。時宜を失した報告はいかに内容が優れていても価値はない。
- 先行性:社長を補佐するためには、社長に遅れをとることなく、先手先手に業務を遂行する。
- 主動の原則:仕事は常に主動的に進め、完璧を求めるあまり、受動に陥ることがないように留意する。
- 中間報告:社長の意図に添った業務を遂行するにあたり重要なことは、中間段階における報告です。
以上の5つの項目を念頭において社長とコミュニケーションを取りながら仕事を進めて下さい。
あなたは社長の指示に応えるために周到な準備と完璧なアウトプットを目指して、懸命に働いていることは十分理解できますし、素晴らしいことです。ただ、この完璧を求めている事が社長の要求に答えていない結果になっているのでは?と私は思うのです。
前述の通り、トップというのは常に先々のことを考え、スピードを要求することが多いのです。補佐者であるあなた(部長)は完璧を求めるよりも社長のスピードについていかなければなりません。いわゆるフォロワーとしてのあり方です。
これを学び、努力をしていけば、真剣に努力している有能なあなたですから、必ずや社長に理解してもらえるでしょう。
いろいろと述べましたが、社長にもあなた(部長)の一生懸命に頑張っておられることが伝わっております。
しかしながら、今回の場合は、社長の考え方、やり方を変えることは出来ません(変える必要もないと思われます)ので、社長の補佐者としてのあなたが、社長の性格を知り、補佐者としての基本的事項を学べば、社長には十分理解してもらえます。
私は解決できる問題だと確信しています。あなた次第だと思っています。
真面目過ぎて健康を害したり、社長(トップ)とのコミュニケーションが不足しないように気を付けましょう。
社長からいろいろと矢継ぎ早に指示されたりしていますが、本当のところ、内心では社長はあなた(部長)のことを実は認めているのかもしれません。
いろいろ指示か出しやすかったり、何でも言えたりするのは、あなた(部長)のことを好んでいる可能性すら感じますので、悲観的過ぎないようにしましょう。
「親心子知らず」の場合もありますので……
いずれにせよ、社長の補佐者としてのあなた(部長)が、社長の意図・期待・要求に応えるように業務を遂行する努力を継続することが社長の理解を得る近道です。補佐に徹する心構えを持って下さい。
※参考 板ばさみ相談室番外編「補佐道①基本動作」、板ばさみ相談室番外編「補佐道②心構え7か条」
今回のまとめ
- 部長はトップの補佐者として補佐に徹する心構えが大事です。
- 報告にあたってはトップの業務遂行に資するために完璧を求めるあまり、時宜を失してはならない。
- 仕事をする上で重要なことはスピードです。何事も先手先手で主動性を発揮しましょう。
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回答者: 呑田好文
元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師。
読者の皆様 いつも有難うございます。 回答は私の拙い体験からしていますので、皆様の期待に十分答えているどうか疑問ではありますが、少しでもお役に立つことがあればこの上ない喜びです。 どうかこれからもご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。 猛暑が続いています。どうか健康管理には十分ご留意下さい。
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