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中間管理職板ばさみ相談室

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Q62
うちの部門に不利益な全社の施策は、
部長として受け入れられません

  • 2026-8-17
  • 営業 部長 40代

私は中堅メーカーで営業第一部の部長を務めています。当部は全社売上の約4割を担う主力部門ですが、その内実は決して余裕のあるものではありません。ここ数年で部員が2名減ったにもかかわらず補充はなく、売上目標は毎年引き上げられています。

期末に向けて大型案件が複数動いており、部員は毎日遅くまで働いている状態です。実は昨年、無理な業務の上乗せが続いた結果、中堅の部員が一人体調を崩して休職しました。私はあの時、部下を守り切れなかったことを今も悔いています。

そんな折、業務統括部長から「全社の業務改革の一環として、営業プロセスの標準化と新しい管理システムへの移行に協力してほしい」と要請がありました。具体的には、案件情報の入力ルールの統一、既存データの移行作業、部員への研修参加などです。

断るしかありませんでした。現在の当部には、こうした要請を受け入れる余力はありません。慣れないシステム対応や研修が加われば、現場は確実に疲弊し、売上にも穴が開きます。売上目標は一切下がらないのに、負担だけが増えてしまいます。そのため、業務統括部長には「うちは今忙しくて対応できない。時期を改めてほしい」と伝え、当部としては見送る判断をしました。

ところが、業務統括部長からは「営業第一部だけが例外になると全社改革が進まない」「自部門に多少の不利益があっても、全社で考えて最適なことはやってもらわなければ困る」と強く言われました。正直、この言葉には引っかかりました。

自部門の不利益がわかっていて、それでも受け入れろというのは、部長として無責任な判断ではないでしょうか。私は営業第一部を預かる立場であり、当部の売上と部員に責任を負っています。人も増やさず、目標も下げず、それでいて「全社のために協力しろ」と言われても、そのしわ寄せを受けるのは私の部下たちです。全社のことを考えるのは、経営陣の仕事のはずです。

とはいえ、他部門は概ね協力しているようで、社内で当部だけが「抵抗勢力」のように見られ始めていることも感じています。自部門を最優先に考え、守り抜くことこそが部長の務めだと、私は信じてやってきました。しかし今回の件で、その前提が揺らいでいます。部長とは、どこまでを見て、何を基準に判断すべき立場なのでしょうか。部門の長としての正しい視座について、ご意見をいただければ幸いです。 

A62
部の代表ではなく、経営の幕僚としての部長であれ

あなたは部長として自分の部を守るべきか、業務統括部長から協力要請のあった業務改革を優先すべきか、まさに板ばさみ状態ですね。この種の問題はよくある事です。「こちらを立てればあちらが立たず、あちらを立てればこちらが立たず」です。

営業第一部長としてあなたは業務統括部長の要請を断る判断をしました。果して営業第一部長として自分の部を優先して断ることが許されるものでしょうか。疑問のあるところです。

また一方、業務統括部長は「全社的な改革のゆえ、あなたの部の事情も分かるが受け入れて協力してもらわなければ困る」とのことです。

お互いの言い分はよく分かりますが、実はこれは二者択一の問題ではないのです。協力するとかしないとかのYESかNOかという問題にしてはいけないのです。

つまり対立的解決を避けるということです。第3の案を出すために両部長が社長の補佐者として協力して解決のための知恵を絞らなければなりません。

とは言ってもあなたのおっしゃることはもっともな事ではあります。そこでこの様な、相反する意見において解決策を考える場合の基本的に重要な考慮事項を以下いくつか参考までに述べたいと思います。

相反する意見の板ばさみ状態を解決するための重要な考慮事項

  1. 戦略的判断
    1つの判断基準は、戦略的判断を優先するというものです。つまり、
    1. ①大局的に見て、全社の観点から業務改革を優先すべきか、営業第一部の置かれた状況を優先すべきかを判断すること。この際、決して戦術的目先の思考に陥らないことが重要です。
    2. ②長期的に見て、全社の将来の発展にどちらがより寄与するであろうかという視点を持つことです。
    3. ③客観的に見て、業務統括部長からの依頼を断ることが自部門にとって果して得策かどうか見直してみることです。
    以上、戦略的思考(大局的、長期的、客観的)で考えてみましょう。
  2. アイゼンハワーマトリックスによる優先順位の検討
    皆さんご承知の通りですが、これは全社的な業務改革の実施を「重要度」及び「緊急度」の2軸で分けて、タスクの優先順位を決める手法です。 アイゼンハワーマトリックス 本問題の業務改革の重要度は高く、緊急度は中程度(第Ⅰ象限~第Ⅱ象限)であると考えられます。
    本手法はプロジェクトを円滑に進めるためなど、色んな場面でも活用できるものです。
  3. 将来性を重視した判断
    将来的な観点から会社発展の可能性と改革の必要性を考慮して優先度を判断することです。
  4. トップの意思決定及び責任を根拠に判断
    本質問のような場合は、トップの意思はどうなのかというのが極めて重要です。トップの責任ある決断が問題解決の一番の近道となります。トップの断固とした決断(決心)が求められます。
  5. 部長は社長(リーダー)の補佐者
    本質問では部長同士がそれぞれの部としてやるべきことをお互いに主張しています。各部長は部の利益代表ではありますが、社長の補佐をする幕僚(スタッフ)としての立場でもあります。よって、部の利益代表として物事を判断して意見を主張することは会社として大変な軋轢を生み、無駄な時間を費やすことになりかねません。
    あなたは自部門の不利益を受け入れるという無責任な判断は出来ないと仰っていますが、業務統括部長も全社の業務改革を成し遂げなければならないという責任を負っています。
    ここで、各部長が自部門の利益代表として振る舞うのであれば各部の対立しか生みません。視座をもっと上げて全社として社長(経営)としての業務改革の目標と各部門の達成すべき目標を明確にする必要があります
    これが、年度の事業計画の作成です。各部の整合性をとり達成すべき目標(必成目標)と達成することが望ましい目標(望成目標)を明らかにすることが一貫性のある事業計画作成の元になると思います。今回の問題も事業計画に立ち返って判断することが重要です
    部長同士は同じ社長の幕僚として一致協力して社長を補佐する立場にあることを認識して欲しいです。そのために幕僚には視野の広さが求められます。

以上のような考慮事項を判断基準として、協力する・しないの他に第3の解決案を模索することが必要かつ重要だと思います。

頼まれごとは試されごと

業務統括部長の全社的業務改革に協力する場合にはどの様な条件で協力するか、という姿勢を持つということです。例えば、協力する時期及び期間、協力する内容及び範囲、部員の研修参加の人数等を調整して自部として努力すれば、支障が最小限に抑えられるような協力の形を模索する等です。

また、協力しない(出来ない)とすれば、果して会社としてあるいは業務統括部長として、それを容認できるのかどうかです。協力しない結果、自部への不利益はないか等も考慮して欲しいです。
ここは大人の対応が求められますね。

なお付言しますが、あなたは「うちは今忙しくて対応できない。時期を改めてほしい」と伝えて、協力できないと判断されています。あなたのおっしゃるのは全くその通りだと思いますが、私は基本的に物事を断る場合に「忙しい」を理由にはしないという考えを持っています。

何故ならば、多くの人が何か頼むと「忙しい、忙しい」と言ってやらないことがあります。業務をやっていて忙しいのは当り前、皆同じです。「忙しい」を理由にすれば頼まれたことは何でも断ることが出来ます。
「頼まれごとは試されごと」です。積極的業務遂行が求められます。

全社最適の視座を持ち、部の長としての責務を果たす

あなたがおっしゃる通り、会社の方向性を考えるのは経営側であることは間違いありません。経営側で決められた業務改革を実施することは極めて重要なことです。

よって、あなたは即NOと言わずに自部の状況を経営側に理解してもらうことも重要な仕事です。経営側に意見具申をして、もし協力出来ないのであればその旨、理由を添えて経営側に意見具申をしましょう。
以下、本質問の解決のための私の基本的な考えを参考までに列挙します。

  1. 上位の目的、目標の達成を優先
  2. 大局的長期的視点からの問題解決
  3. 1部門の利害を優先しないで全社的視点で
  4. 自部門の犠牲があっても全社的目的、目標達成するという気概を持った部員(社員)の育成
  5. 物事はまず「YESから入る」という考えを持つこと
  6. 「忙しい」を出来ない(やらない)理由にしない

以上です。全社のためには一時的な犠牲も厭わないという士気の高い部を、部長として日頃から育成しておくことが強い組織をつくることだと思います。

営業第一部長としてあなたの苦悩はよく分ります。
部員が売上げを立てるためにかなり無理をしている状態ですが、将来的に見てこの業務改革により、その様な状態が緩和されるのかどうかも重要なことです。

「業務改革の目的は何か?」「業務改革による効果は?」「自部署への好ましい影響は?」等を考慮して、部員に対して業務改革への協力の必要性・重要性を認識させて欲しいものです。

単に自分の部のことのみを考えて部を守ることを優先するだけでは部長としての役割を果しているとは言えません。
改革に協力することが、結果として自分の部を守ることだという前向きな活力のある部をつくる気概を持つ
ことも大事です。リーダーは時には苦汁の選択を迫られることがあるのです。

勿論、部員を酷使して全社への悪影響を及ぼすことは避けなければなりません。そこにこそ部長としてのあなたの手腕が問われることになるでしょう。解決の道を信じて協力するかしないかという二者択一の考えではなく第3の解決案を案出して欲しいと思います。

誌面からは解答に限界がありますが、何らかの解決の糸口になれば幸いです。

今回のまとめ

  • YESかNOか、二者択一の解決を図らず第3の案を検討する
  • 戦略的(大局的、長期的、客観的)判断を優先する
  • 一時的な犠牲も厭わない士気の高い社員を育成する

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回答者: 呑田好文

元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師

暑い夏、皆様どのようにお過しでしょうか?
十分な休養(睡眠)と旺盛な食欲は大事ですね。健康第一、積極思考で暑い夏を乗り切って参りましょう。
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