アメリスが「業務改革の成功にはプロセスが不可欠」という確信に至るうえで大きく影響を受けた、コロンビア大学・マックグラス教授の「改革成功の方程式」講義内容を紹介。
マックグラス教授の教え
アメリスが、業務改革成功の秘訣として「プロセス」焦点を当て、「プロセスのプロです。」と謳う、プロセスコンサルタント/ビジネスアナリスト集団となったのは、いくつかの経緯があります。
今回はその中から、橘高が受けたコロンビア大学リタ・ガンサー・マックグラス教授の「改革成功の方程式」の講義の内容をご紹介させていただきます。
マックグラス教授は、2013年に経営学のアカデミー賞といわれる『世界で最も影響力のある経営思想家(THINKERS 50)』の第6位にランキングされたコロンビア大学ビジネススクールの教授です。10年以上前に、教授が来日された際、橘高は縁あって数日間の授業に参加したのでした。
ビジョン、怒り、プロセス
「ビジョン、怒り、プロセス。これら3つのうち、改革において最も重要なものは何だと思いますか?」
教授の講義は、こんなシンプルな質問から始まりました。「ビジョンだと思う人?」40人程のクラスのうち、半数以上が手を挙げました。「怒りだと思う人は?」10人ほどでしょうか、パラパラと手が挙がりました。「プロセスは?」ほんの数人。
すると教授は「答えはプロセスです」と言い切りました。「ビジョン」に力いっぱい手を挙げていた私をはじめ、周囲が少しざわついたことを覚えています。
女性参政権運動を例に
それを落ち着かせるように、教授は「米国の女性参政権運動を例にとって説明しましょう」と解説を始めました。
まずは、「怒り」。たくさんの女性活動家が、女性に参政権がないのはおかしいと不満を抱き、デモ等を通じて訴えましたが、それだけでは事態は一向に改善されませんでした。
続いて、「ビジョン」。女性の参政権の必要性を、「男女平等」や「民主主義の理念」の名の下、長年に亘り訴え続けるうちに、多くの人々が活動に参加する一大ムーブメントとなりましたが、それでも参政権を獲得するまでには至りませんでした。
最後に、「プロセス」。米国における女性の参政権を実現したのは、ある一人の日系人女性でした。参政権を獲得するには実に様々な手続き、複雑に入り組んだ法律を修正する必要があったのですが、これを弁護士だった彼女が解きほぐし、改正案を書き上げたのです。
そう、彼女が法律の改正案、すなわち「プロセス」を整備してはじめて女性の参政権獲得という改革が達成されたわけです。
(※聴講からずいぶんと時間が経ってしまったため、女性参政権にかかる詳細は不正確なところもあるかもしませんがご了承ください)
プロセスがないと“真空状態”に
そして、教授は「先程の皆さん同様、多くの人は改革には『ビジョン』が最も重要だと考えます。たしかに『ビジョン』や『怒り』は求心力や原動力として不可欠なものです。しかし、そこに『プロセス』が伴っていなければ、物事は進まず、言わば『真空状態』になってしまいます。すると、だんだん人の心というのは醒めてきてしまい、活動は道半ばで消滅してしまうのです。したがって、改革の実現には『プロセス』が最重要だと言えるのです」と締めました。
当時、組織のプロセス整備に従事しつつ、一方で大小様々な業務改革にも携わっていた私にとって、プロセス整備という仕事と業務改革の成功が結びつき、「やっぱり業務改革の成功にはプロセスが絶対に必要なんだ!」と確信した瞬間でした。
業務改革の成功にはプロセスが絶対に必要
教授は、「改革成功の方程式」として、「T(Transformation: 改革) = D(Dissatisfaction: 怒り) × V(Vision: ビジョン) × P(Process: プロセス)」というシンプルな式で説明しています。
この式の説明の中で、教授は「プロセス」の役割を「目的の状態への到達を妨げる障害を除去する」としつつ、「 D(Dissatisfaction)、 V(Vision) 、 P(Process)はどれも大事であるが、企業における改革(業務改革)においては特に「P(Process)」が見落とされがち、軽視されがちであるので気を付けるべき」と強調しています。
これはすなわち、「プロセス」を作ることはそれだけ難しいことだ、ということを示しているのだと思います。それならば、その「難しい『プロセス』というもの」に真っ正面から取り組むことで、たくさんの企業のお役に立てるのではないか?と考えたのが、アメリスがプロセスに焦点を当てている経緯の一つなのです。
まさに「言うは易く行うは難し」。「ビジョン」を結実させる為の「プロセス」の確立は、リーダーが本気で取り組むべきとても重要な使命であると、アメリスは考えています。
※ブライトラインによる「Leading Lasting Change with Rita McGrath (Strategy@Work webinar)」で「改革成功の方程式」のエッセンスがご覧いただけます。
人が変化に抵抗する心理
また、教授は、大きな変化を伴う改革において、人が変化に抵抗する心理的なステップを、以下のように分析しています。
- 衝撃を受ける
- いったん拒否する
- 意気消沈する
- やがて怒りに変わる
- 対話や駆け引きをする
- 新しい方法を受け入れる
こんなにも激しい感情の移ろいがあるわけですから、トップダウンでの投げっぱなしでは失敗に終わるのは明白です。その点、業務を「見える化」し、「業務プロセス」を整備することは、現場に共感し、耳を傾け、しっかりと業務を辛抱強くサポートすることと同義と言えます。大きなパラダイム転換を伴う業務改革において、社員の心理的な抵抗を最小限に抑えるためにも、「業務プロセス」は必須であると言えます。