Skip to content(本文へジャンプ)

Amelys Journal

ポストコロナ・圧倒的人手不足時代、企業変革はCXへ

  • 2025-01-20
  • 業務改革コラム

いま日本企業は、ポストコロナと深刻な人手不足という二つの大きな波を受け、重大な転換期に立たされています。2024年現在、多くの企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組み、ペーパーレス化やリモートワーク環境の整備などを進めてきました。しかし、個別のツール導入に留まり、期待したほどの業務効率化には繋がっていないのが実情です。

さらに、あらゆる業種・部門で人手不足が深刻化し、従来のやり方では事業継続すら危ぶまれる状況となっています。こうした課題を乗り越えるためには、単なるデジタルツールの導入(DX)を超え、企業全体の構造を変革するCX(コーポレート・トランスフォーメーション)への取り組みが不可欠です。本稿では、業務改革の専門家へのインタビューに基づき、企業の現状と課題を深掘りし、CX実現に向けた道筋を探ります。

1DX一巡後の課題: 個別最適化の弊害と「2025年の崖」

ポストコロナ禍で見えたDXの限界

2023年にコロナ禍が明けて以降、多くの企業、特に中堅以上の企業では、電子会議システム、経費精算、ワークフロー、勤怠管理といった個別のSaaS導入は一通り完了しました。これにより、分散型ワークスタイルは実現可能になったものの、業務全体の効率が上がったかというと、疑問符がつきます。

むしろ、「SaaSを入れ過ぎて、一つの契約締結に5つのシステムを経由する必要がある」といった非効率な状況も生まれています。個々のツールは便利でも、それらが連携せず、業務プロセス全体が最適化されていないためです。結果として、「リモートワークはできるようになったが、全体の効率はむしろ下がった」と感じる企業が増え、業務プロセスやルールそのものを根本から見直す必要性が認識され始めています。

迫りくる「2025年の崖」

経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」も、いよいよ現実味を帯びてきました。レガシーシステムの限界、サポート終了といった問題に加え、取引先からのシステム変更要請など、外部環境の変化への対応も迫られています。これまで内製ツールで何とか対応してきた企業も、全面的なクラウド移行や基幹システムの刷新なしには業務が回らなくなってきており、ITシステムに関する相談は急増しています。特に、後手に回って検討を始めると、どこから手をつけて良いかわからないという状況に陥りがちです。

2待ったなしの人手不足対策: 組織再編とリソースマネジメント

全業種共通の悩み「人手不足」

現在、「人手不足で困っていない」という企業を探すのは困難です。この深刻な問題に対し、多くの企業が取り組んでいるのが、バックオフィス機能の集約化と、それによる人材のフロント部門への配置転換です。支店の事務部門をセンター化する、あるいは組織は維持しつつ業務のやり方を標準化・共有化するといった形で、限られた人材を有効活用しようという動きが活発化しています。

これからの鍵は「リソースマネジメント」

今後、採用環境の劇的な改善が見込めない以上、社内リソースの最適配置、すなわちリソースマネジメントの高度化がますます重要になります。特定の部署が多忙を極める一方で、他の部署には余裕があるといった縦割り組織の弊害をなくし、状況に応じて柔軟に人材を配置転換できる仕組みが必要です。例えば、全社的に繁忙期の営業を支援する、採用活動を分担するなど、組織の壁を越えた協力体制を構築することが、企業の持続的な成長に不可欠となるでしょう。

3業務改革の鍵: 「バラバラ・別々」の解消と経営者のリーダーシップ

本当の「無駄」は何か?

業務改善の相談では、「無駄な業務を見つけて止めたい」という要望が多く聞かれます。しかしアメリスでは、長年の業務改善の積み重ねの結果、完全に不要な業務というのは実はそれほど多くない、ということが分かってきました。最も大きな「無駄」は、部署や拠点ごとに「似て非なるやり方」で業務が「バラバラ・別々」に行われていることです。

この「バラバラ・別々」をやめることこそが、最大の効率化に繋がります。「不要な業務の廃止」よりも「業務遂行方法の標準化・統一」に焦点を当てるべきです。

改革断行に必要な経営者の「危機感」と「覚悟」

しかし、業務の標準化・統一は、現場からの抵抗も予想される難しい取り組みです。ここで不可欠となるのが、経営者の強いリーダーシップです。「会社を良くするため」という信念のもと、トップが断行する覚悟がなければ、改革は進みません

その覚悟の根底に必要なのは、「今のままでは立ち行かなくなる」という本質的な危機感です。優秀な社員が辞めていく背景にある組織の構造的な問題や「経営負債」の存在を理解し、まだ余力のあるうちに変革に着手しなければ、手遅れになりかねません。問題の根本原因を理解せず、「最近の若者はすぐ辞める」といった表面的な認識に留まっていては、効果的な対策は打てません。外部の専門家の視点を取り入れることも有効でしょう。

42025年展望: CX本格化とデータドリブン経営への移行

DXは浸透・活用フェーズへ

2024年に基幹システム刷新に着手した企業は、2025年にはそのシステムの定着と活用が主なテーマとなるでしょう。また、基幹システム以外のレガシーシステムへの対応も引き続き課題となります。さらに、導入したシステムから得られるデータを分析し、経営戦略や営業活動に活かしていくデータマネジメントの動きも加速すると考えられます。ただし、システム入れ替えの失敗リスクは依然として存在し、特に発注者側のITプロジェクト経験や標準的な進め方への理解が成功の鍵を握ります。

CX(コーポレート・トランスフォーメーション)がいよいよ本格化

個別のDXや業務改善の積み重ねでは乗り越えられない課題が顕在化し、企業全体の変革、すなわちCXの必要性がいよいよ高まっています。しかし、多くの日本企業にとって、大規模な組織変革はまだ身近なものではなく、それに必要な時間やリソース、困難さに対する具体的なイメージ(相場観)が共有されていないのが現状です。この「相場観の欠如」が、変革への一歩をためらわせる要因の一つかもしれません。

求められる「業務×データ」による意思決定

これからの企業経営においては、可視化された業務プロセスと、そこから得られる活動データを掛け合わせることで、より実態に基づいた客観的な意思決定を行うことが重要になります。これにより、勘や経験に頼るのではなく、データに基づいたリソース配分や組織再編などが可能になります。

おわりに: 未来を切り拓くための企業変革

日本企業は今、ポストコロナ、人手不足、デジタル化の進展という複合的な要因により、大きな変革を迫られています。もはや部分的な改善では対応しきれず、企業全体のあり方を見直すCX(コーポレート・トランスフォーメーション)が不可欠です。

その鍵となるのは、業務プロセスの標準化・最適化、データに基づいた客観的な意思決定、そして変化に対応できる柔軟な組織体制の構築です。経営者は強いリーダーシップと危機感を持ち、外部の知見も活用しながら、未来に向けた変革を断行していく必要があります。

  1. HOME
  2. Amelys Journal
  3. ベテラン人材が陥る罠!?
    「まずやってみる」は失敗を招くことも……