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Amelys Journal

企業内情報管理シリーズ②
前職のノウハウを
転職先で使っても大丈夫?
営業秘密の3要件を解説!

  • 2022-11-21
  • 情報管理コラム

競合に勝つためのノウハウや、企業内で共有されている有益な情報など、企業の利益や成長に欠かせないのが、営業秘密です。その営業秘密を適切に取り扱うことは、現代において企業が生き残る上での最優先事項のひとつ。そしてそのために、まずは「営業秘密とは何か」を理解することが大切です。
そこでこのコラムでは、法的に営業秘密と認定されるための3要件や、営業秘密に関する法律、そして営業秘密侵害の事例までを解説します。

そもそも営業秘密とは何か?

営業秘密は、「不正競争防止法」で、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義されています。技術情報、現場ノウハウや取引先に関する情報など、事業を行う上で重要な情報で、企業内で秘密として管理されているものが、営業秘密にあたります。

具体的には、下記の3要件を満たしたものが「営業秘密」と法的に認定されます。

  1. 秘密として管理されていること=「秘密管理性」
    秘密管理性とは、その情報が客観的に「秘密として管理している」と認識できる状態にあること。営業秘密でない情報とはっきり分けられ、「これは営業秘密である」と従業員に明確に示されている必要があります。明確に示されている具体的な例としては、
    1. 情報にアクセスできる者を特定すること(扱う者が制限されていること)
    2. 情報にアクセスした者がそれを秘密であると認識できること(パスワードがかかっている、社外秘と書かれている等)
    などがあります。
  2. 有用な情報であること=「有用性」
    有用性とは、その情報が、客観的に事業活動にとって有用であることを指します。一方で、詐欺や粉飾決算など、企業の反社会的な行為などの公序良俗に反する内容の情報は、有用だと認められません。
  3. 公然と知られていないこと=「非公知性」
    営業秘密が一般的に知られた状態になっていない状態、または、容易に知ることができない状態である「非公知性」も求められます。プレスリリースや企業のホームページで公開されていたり、誰でも見られるような情報はこれに該当しません。

営業秘密を漏えい・侵害するとどうなる?

では、上記の要件を満たした営業秘密を漏えい・侵害すると、法律でどのように裁かれるのでしょうか。

他社の営業秘密を不正利用した者は、不正競争防止法に従い、不正取得した情報の取扱いをやめるよう「差し止め請求」を受けたり、「損害賠償請求」、「信頼回復措置請求(謝罪文を新聞に載せるなど)」を受けることがあります。

また、上記の民事上の損害賠償等に加えて、刑事罰を受けることもあります。日本での営業秘密に関する不正行為に対しては、懲役10年以下もしくは2千万円以下の罰金、またはこれらの併科の罰を受けます。法改正により懲役の年数や罰金額が増えていることからも、社会的に営業秘密侵害へのインパクトが大きくなっていることがわかります。

現在、知識集約型経済の発展にともない、無形資産である技術、ノウハウ、アイデアなど、情報自体の重要性が上がり、それが会社の価値を高めています。一方で、近年の通信インフラやICT技術の発展によって情報が簡単に移転できるようになり、秘密管理体制を突破して情報が漏えいする事案が多発しています。そして、一度、情報が外に漏えいしてしまうと、その拡散を止めるのは非常に困難です。そのため、情報の中でも無形財産として価値の高い営業秘密は、法律で厳格に守られているのです。

営業秘密侵害の事例

では、具体的にどのようなケースが営業秘密の侵害にあたるのでしょうか。身近で起こりえる営業秘密侵害の事例をご紹介します。

  1. 転職者が、元いた会社独自の業務ノウハウを転職先で利用

    前職で在職中に知った会社独自のノウハウや技術情報を、退職後に転職先で利用して業務を行うことは、営業秘密侵害の可能性があります。その情報が会社の営業秘密として認定されている場合(パスワードがかけられている、社外秘と書かれている等)は、不正利用をした元従業員が訴えられたり、転職先の会社が損害賠償金を請求されたりする可能性もあります。
    「在職中に自らが作り出した、または自ら得たノウハウだから次の会社でも使っていい」と思いがちですが、それが営業秘密に認定されている場合は法律違反にあたるため注意が必要です。

  2. 前職で知った顧客情報に基づいて、転職先の会社で営業

    前職のお客様との会話で得た顧客課題や予算情報、人事情報などを転職先の会社で営業に使ったり、他の社員に教えたりすることは、営業秘密侵害にあたる可能性があります。「自分で獲得した情報だから問題ない」という判断はNGです。

  3. SNSで秘伝のレシピを拡散

    アルバイト店員が、働いている飲食店のレシピをSNSで公開。第三者もリツイートなどでこれを拡散し、広く知れ渡ってしまうケース。しかし企業は、これを秘伝のレシピとして秘密管理していました。不正に取得された情報と知らずに拡散してしまった人が多かったものの、レシピが社外に出回ると、飲食店の営業に影響が出る可能性があります。

    そこで会社側は、企業のホームページやプレスリリースで「これは営業秘密にあたるから拡散しないでほしい」と公開しました。そのことを知った上でレシピ情報の投稿・拡散を行った場合は、営業秘密侵害とみなされることがあります。


営業秘密は可視化しなければ守れない

営業秘密漏えいは、行為者自身が罰せられるだけでなく、企業としての競合優位性を失ったり、社会からの信頼を失ったりするなどの損害につながるリスクが大きい事案です。ただし、個人の頭の中にあるだけの情報やノウハウは、たとえ漏えい・悪用されてしまっても、営業秘密として認定されず、法律に従って守ることができません。そして、営業秘密情報と営業秘密に該当しない情報がいっしょくたに存在してしまい、どれが営業秘密情報なのか従業員が把握していない状況が、もっともハイリスクです。自社や顧客を守るためにも、営業秘密情報を可視化し、「これは営業秘密である」と明確にすることが大切です。

次回は「個人情報」の管理のポイントを詳しく解説します。

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