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Amelys Journal

企業内情報管理シリーズ④
どこまでがインサイダー情報?
情報漏えい事件の事例や刑事罰の要点

  • 2023-03-27
  • 情報管理コラム

適切に管理すべき企業内情報のうち、重要なもののひとつがインサイダー情報です。自社内や取引先から知り得た、上場会社に関する「未公表」の情報をもとにした株の取引が法律で厳しく禁じられていることや、その行為が、自分自身や企業に与える影響の大きさを正しく理解していない人も多いのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、インサイダー情報について、その言葉の意味や実際の漏えい事件の具体例について解説。また、インサイダー情報を含む企業内情報の漏えいが法律上、厳罰化されている現状についても説明します。

インサイダー情報とは?

近年、メディアでも取り上げられる機会が多い「インサイダー情報」という言葉。インサイダー情報とは、上場会社の株価に一定の影響を与えるような「未公表」の「重要事実」のことをいいます。

金融商品取引法第166条において、会社関係者が、①その地位や立場上知ったインサイダー情報の公開前に、その上場会社の株式の売買を行うこと(インサイダー取引)、②インサイダー情報の伝達・株式の推奨をすること、は禁じられています。

たとえば、「上場会社」に関する下記のような情報が、インサイダー情報に該当します。

  • 株式又は新株予約権の発行
  • 資本金額の減少
  • 資本準備金又は利益準備金の株式分割・株式移転
  • 会社合併
  • 会社解散
  • 新製品や新技術の企業化
  • 災害や業務上の損害
  • 業績予想
  • 配当予想

株式に関する情報や合併といった会社の今後を左右する重大な情報だけでなく、新製品や新技術など、一般社員が日頃の仕事で扱っている事柄も、インサイダー情報にあたることがあるため注意が必要です。

逮捕者も発生している近年のインサイダー取引事件

インサイダー情報に関して企業や社員が特に注意しなければいけないのが、インサイダー取引です。インサイダー取引事件は近年多く発生しており、逮捕者も出ています。

その一例として、2022年の年末に大手上場ゲーム会社の元社員が逮捕されたインサイダー取引事件を挙げることができます。元社員は、その企業の在籍時に、大型ゲームタイトルの新製品情報を入手し、そのゲームタイトルの発売が公表される前に協同開発会社の株を大量に買い付けた(その会社の株価は情報公開後に急騰)として、金融商品取引法違反の疑いで逮捕されました。そのゲームタイトルが非常に有名なものだったこと、逮捕者の中に著名なゲームクリエーターが含まれていたことから、大きな話題となりました。

この事件は、上場企業に所属していた社員により引き起こされたものですが、自分が上場企業に所属していない場合でも、注意が必要です。取引先や関係先である上場企業のインサイダー情報を入手し、その情報を伝達したり、それらの情報をもとに株の売買を行ったりすることは犯罪行為にあたるからです。

企業では、インサイダー情報に関するこれらの行為を防ぐための対策が求められます。企業内にどのようなインサイダー情報が存在するかを明確化した上で、インサイダー取引の未然防止に向けたルールを構築し、社員に周知徹底する必要があります。

企業内情報の漏えいが厳罰化されている

では、インサイダー取引など、企業内情報の漏えい事件を起こすと、どのような罰則が科されるのでしょうか。

この連載の前回までのコラムで取り上げた、営業秘密情報および個人情報、そして今回取り上げたインサイダー情報に関する不正行為に対する民事上の損害賠償救済措置および刑事上の罰則を、下記の表にまとめました(2023年3月時点)。

情報分類 民事上の損賠賠償救済措置 刑事上の罰則
個人 法人
個人情報
  • 損害賠償請求(1人あたり数千円から数万円)
  • 措置命令違反の罰則:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
  • 個人情報DB等の不正流用:1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 報告義務違反の罰則:50万円以下の罰金
  • 措置命令違反の罰則:1億円以下の罰金
  • 個人情報DB等の不正流用:1億円以下の罰金
  • 報告義務違反の罰則:50万円以下の罰金
営業秘密情報
  • 差し止め請求
  • 損害賠償請求
  • 不当利得返還請求
  • 営業秘密侵害罪:10年以下の懲役若しくは2千万円以下の罰金(又はこれらの併科)
  • 営業秘密侵害罪:5億円以下の罰金
インサイダー情報 (損害の特定・推定が難しいとされている)
  • インサイダー取引違反:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(またはこれらの併科)
  • 違反者に課徴金の納付命令
  • インサイダー取引違反:5億円以下の罰金
  • 取引違反&情報伝達に課徴金納付命令

インサイダー取引を行うと、個人に対しては5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(またはこれらの併科)、そして法人には、5億円以下の罰金という重い罰則が与えられます。

また、企業内情報の漏えい事件に関する刑事罰は、法改正により近年ますます重くなっています。こうした法律上の規制の観点からも、企業や企業で働く社員は、よりいっそう企業内情報管理への意識を高めていく必要があります。

社員ひとりひとりにインサイダー情報の正しい知識を!

社員がインサイダー情報をもとに株を売買することは法律違反にあたり、厳しく罰せられます。逮捕者の発生は、社員の不祥事として企業にダメージを与えるとともに、情報管理体制の甘い企業という印象を招き、顧客や取引先からの信頼を失うことにもつながります。

インサイダー情報漏えいによる損害を防ぐために重要なのは、社員たちが正しい知識を得ることです。「知らなかった」という事態が大きな事件につながる前に、社内に存在するインサイダー情報と、それを漏えいした場合に具体的に何が起こるかについて、社員ひとりひとりに正確に伝えることが重要です。

次回は、これまで解説してきた営業秘密情報、個人情報およびインサイダー情報等の企業内情報を、適切かつ包括的に管理するために欠かせない「業務整理」や「ルール作り」についてお伝えします。

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