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中間管理職板ばさみ相談室

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Q33
最後の最後に「聞いていない」と言われてげんなり

  • 2024-03-25
  • 製造業 マネージャー(40代)

製造業の会社の本社営業部で企画をやっております。X部長についての悩みです。社長から課題をいただいたので、課題解決の方法として新しい企画を考えました。会社としては前例がない企画でしたので、部長とも相談の結果、企画を通すためには他部署の承諾が必要だということになり、A部、B部、C部、D部に対して、企画についての説明を一部署ずつ丁寧に行いました。
説明する中では、A部にある点を指摘され、それに対して対応策を練り直したところ、今度はC部が文句を言い、それでもなんとか説得して、D部に持っていくと「今それをやる必要性があるのか」と言われ……とにかく根回しに時間がかかってしまいました。ようやくなんとか企画を通す会議までこぎつけたのですが、その場で、今回の件は実務上何も関係ないはずのX部の部長が「聞いていない」と言って怒り始めました。私は知らなかったのですが、部長曰くX部の部長は「聞いていない」と言って企画を止めることで有名だそうで、その場にいた部長陣は「また始まった」という顔でうつむいて沈黙するばかり。結局、企画は会議で通りませんでした。根回しで苦労しただけに、その結果に落胆しています。部長もX部長がそういう人だと知っていたなら先に言ってほしかったのですが、私は実務上では関係ないはずのX部長にも根回ししないといけなかったのか、疑問に思います。

A33
スタッフは一致協力してトップを
補佐する

本質問を一読して、実務上関係ないはずのX部長が「聞いていない」と怒り始め、企画が通らなかったことに驚いています。まず、X部長という人はどんな人だろうと驚くと同時に、X部長の「聞いていない」という理由を看過して言いなりになっているA、B、C、D各部長は一体どんな人たちだろうと。誰でも何かがおかしいと思いますよね。いったい何が問題なのでしょう。
私は以下のような問題点があると感じています。

  1. 意思決定の仕組み(決裁権限規程)がない
  2. 組織的活動ができていない(あるいは、組織的活動とはどういうことかが分かっていない)
  3. 会社の体質の問題(一事が万事、本質問のように仕事が行われる)
  4. トップとスタッフ(指揮官と幕僚)の関係が理解されていない

あなたの社長課題に対する仕事の進め方は良いと思います。社長課題の分析、各関係部署との調整・根回しの実施、企画の承認を得るための会議の実施等は手順通りで、そこまでこぎつけられたことは担当者としてのあなたの行動の成果と言えます。

ここで、会議の実施について復習の意味で、以下を述べておきたいと思います。  まず、社長からの課題を分析します。それは、その課題の実施の可否、実行の可能性、問題点、実施する場合の利点・欠点を明らかにします。

上記分析を基に会議を実施するか否かを検討します。

  1. 会議以外で目的を達成できるのであれば、質問のように各部に対して説明して回り、承認を得ます。
  2. 会議を実施する場合
    関係各部で一堂に会してもらい、企画の説明を行います。その際、前例のない企画だけに賛否、問題点、解決すべき課題など意見を聞く場を設けるべきです。勿論、各部毎の根回しも必要かつ重要です。また、それぞれのステップにおいてやるべきことは以下のようなことが挙げられます。
    • 会議前
      会議の目的(情報の共有なのか、何か決定承認を得る場なのか等)を明らかにし、所掌部、主宰者、司会、参集者(関係各部の部長と各部担当者など)、会議の日時、場所の決定、会議にあたり準備すべき事項(各部長に対する意見の事前聴取、会議資料の準備等)
    • 会議当日
      開会の宣言、所掌部長(あるいは社長)挨拶、本会議の目的(会議における決議、合意事項など)と進め方(スケジュール)、本議題の分析結果等報告(課題の今後の進め方など含む)、意見聴取と質疑、必要な場合は採決の実施等
    • 会議後
      会議の内容(議事録)を書類に残し、各部の承認を得る

以上、少し脱線してしまいましたが、X部長みたいな人に邪魔をされずに組織的に課題解決を進めるためには、仕事の手順が重要です。会議の実施は業務上極めて重要ですので付言いたしました。

さて、本題に戻りましょう。実務上関係のないはずのX部長にも根回ししないといけなかったのか、という質問の回答ですが、根回し(というか、本社長課題についての説明)は何らかの方法で必要だったと思います。
なぜならば、部長という立場であれば、自分の部署に関係ないことでも、他部署あるいは会社で何が行われているかを知っておく必要があるからです。部長は、社長(トップ)の補佐者(スタッフ)の立場にあります。スタッフは全員で一致協力してトップを補佐するのが原則です。意見を述べること(意見具申)も立派な補佐ですので、たとえ所掌外であっても、立場上意見具申は可能です。会議の席上などで意見を述べることは大いに推奨されるべきことです。
ただし、この質問でのX部長の反対理由の「聞いていない」は論外ではありますが……

X部長が「聞いていない」と反対する理由はなぜでしょうか。次のようなことが考えられると思います。

  1. いつも情報が来なくて孤立してしまうことへの反発
  2. X部長自身の個人的な性格によるもの
  3. 自己顕示欲、自分の存在のアピール、個人的実力の誇示

X部長は少し変わり者のようですが、上記のようなことを加味しながら、あなたには根気強く会社の変革を推し進める原動力になってほしいと期待しています。その実力をお持ちのようですから。

仕事はあくまでも会社、ひいては社会、顧客の発展のためにやるべきもので、軽々しく課題解決をやめたりしてはなりません。トップの意思(決心)に基づき、スタッフが力を合わせて組織的に課題解決に取り組むべきです。
会社が組織的活動を行うためには、リーダーとスタッフのあるべき姿の原点に立ち返る必要があります。トップとスタッフのあり方については、今後、指揮道(トップ)、補佐道(スタッフ)の心得としてコラムを掲載予定ですので、ぜひそちらも参考にしてください。

今回のまとめ

  • 部長は社長(トップ)の補佐者(スタッフ)である
  • 部長は、自分の部署に関係ないことでも、他部署あるいは会社で何が行われているかを知っておく必要がある。よって説明は必要
  • スタッフは一致協力して組織的に課題解決に取り組むべし
担当者コメント

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回答者: 呑田好文

元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師

全国あちこちに行くことが多いですが、道中の作業がしやすいので、遠方(九州あたり)でも新幹線での移動が多いです。

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