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Q34
孤軍奮闘している同僚を支援したい

  • 2024-04-22
  • 商社 人事部課長補佐(40代)

人事部で課長補佐をしています。私の仕事は、海外拠点に異動となった社員の、ビザの手配から現地での立ち上げに必要な身の回りのサポートをすることです。先日、半年前にロンドンに送り出した仲のよい同期から、疲れ果てた声で「会社は何も支援してくれないよな」と言われ、とてもショックを受けました。当初聞いていたのは、営業部門や海外統括部が協力して、現地ビジネスを立ち上げるという話でした。しかし、彼曰く「誰も手伝ってくれない」とのこと。気になって、当時の決裁文書を開いてみたのですが、「営業部門や海外統括部とのコラボレーションも可能」との記載で、拠点の立ち上げの実務体制の責任が不明確でした。

送り出すまでは、人事部含め各部門盛り上がるのですが、大抵その後のことは何も決まっておらず、本人任せというのは、この彼だけのことではありません。とはいえ私も、毎月の異動者、出向者の対応で手一杯で、送り出した人をサポートし続ける余裕はありません。このままでは、同期が会社を辞めてしまいそうです。組織として、拠点や出向に送り出した人をサポートするには、何をしてあげればよいのでしょうか。他の会社はどうされているのかも気になります。

A34
要望を聞き出し、各部署で
可能な支援を明確にする

本問題は、海外赴任者に対する会社としての支援体制が不明確であること、あるいは欠如していることに起因しています。そもそも支援体制の一元化がなされておらず、仰る通り責任の所在が不明確なところが問題ですね。

営業部門、海外統括部、人事部等社内における海外赴任者支援の任務分担が十分ではないと思います。各部にまたがる案件は特に責任の明確化が必要で、統括する所掌部を決めて指揮を一元化すること(統一の原則)が必要です。

つまるところ、海外赴任に伴う赴任者支援を含めたマニュアルが整備されていないのではないかと考えられます。あなたは同期として何とか彼を助けてあげたいと思っておられるのですが、海外赴任にあたっての基本的なマニュアル(規則)がなければ会社として総力を上げて組織的に支援するのには限界があります。

いずれにせよ、「会社は何も支援してくれない」「誰も手伝ってくれない」と言われたのはショックですよね。ここではまずは、当面の同期の方のサポートについて述べたいと思います。

とはいう私も海外赴任の経験はありませんので、回答できる内容には限りがあります。海外赴任者を近くで見たり、赴任者の話を聞いたり、海外赴任する同僚たちを見送ったり、海外から来た人の受け入れをした経験からの回答となりますので、悪しからずご理解いただければと思います。

海外赴任というと、一見花形のように見えますし、赴任者本人も意気揚々と未知の所へ希望を持って出発されるのではと思います。勿論そこには不安も同居しているでしょう。現実となるといろんな問題があると推測できます。赴任者は、色々な問題や不都合なことを帰国(任務終了)まで黙って我慢してしまうケースも多いと感じます。本質問にある赴任者のように素直にはっきりと言ってくれる方も少ないし、あなた(同期で気心が知れている仲)だから本音を言ってくれたのでしょう。貴重な意見として受け止めてほしいですね。

あなたが最もやるべきことは、定期的に連絡を取り、何か困ったことはないか本音を聞き出すことです。彼は、あなたなら聞いてくれる、あなたなら分かってくれる、あなたならやってくれると頼りにしています。彼の本音をしっかり聞き、問題点を把握して解決の方策を検討すると良いでしょう。そして、自分の部署(人事部)でできる支援と他部署で支援すべきことをはっきりとして解決のための手順を決めて実行しましょう。

海外赴任となると我々の想像以上の精神的負担が伴うものですから、精神的な面へのケア体制、ご家族(留守家族含めて)のフォロー等、細かいことまで配慮する必要があります。海外赴任者の支援はかなり綿密な調整と準備、仕事に専念できる環境を与えることがポイントです。「至れり尽くせり」という言葉がありますが、そこまでやってあげるのかと思うくらいの支援を惜しまないことを念頭に置きましょう。過去に多くの海外赴任の経験者が社内にいれば教訓の累積はできていると思います。「後顧の憂い」をなくす、「係累の除去」をするという考えが大事です。

回答になっているか甚だ疑問ではありますが、今回の件を機に海外赴任者に対する支援のあり方を検討され、海外赴任マニュアルを作成されることをお勧めします。

マニュアル作成にあたっては、赴任前・赴任中・赴任後の赴任者が直面する問題点を明らかにする必要があります。支援は、赴任中のみならず、赴任前・赴任後も重要です。

終わりに、本質問は会社の海外赴任者に対する支援・配慮の不足、つまり理解不足が問題のようですね。赴任前の準備、赴任中のフォロー、赴任後の問題の把握など人事部(人事部課長補佐)として、十分状況を確認する必要があります。今回の件を「他山の石」として今後このようなことが起きないように改善してほしいものです。また、海外赴任者の多い他社のケースに学ぶことも一案です。参考になれば幸いです。

今回のまとめ

  • (できれば赴任前に)海外赴任者支援の任務分担を明確にしておく
  • 要望を聞き出したうえで、自部署と他部署で支援すべきことを明確にする
  • 今後のために海外赴任者マニュアルを会社として作成する
担当者コメント

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回答者: 呑田好文

元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師

全国あちこちに行くことが多いですが、道中の作業がしやすいので、遠方(九州あたり)でも新幹線での移動が多いです。

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