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Q41
本社の指示を無視しろと言う部長
- 2024-11-25
- 不動産業 支店営業部 課長(30代)
現在、全国展開している不動産仲介会社の地方支店の営業部にて課長をしています。
毎月、本社のマーケティング担当者から私の上司の部長を通さず、私に直接、新しいマーケティング施策実行の指示および実行結果に関する報告を求めてきます。
部長にマーケティング施策実行の進め方について相談すると、「マーケティング担当者は現場のことを何も分かっておらず、無茶な施策を突き付けてくるため、付き合うだけムダであり、相手にしなくてよい」との一点張りで、相談にもまともに乗ってもらえません。
営業本部のマーケティング担当者からももっと積極的に協力して欲しいと直接注意を受けているのが現状です。
本来マーケティング担当者から部長に対し、実行指示や報告を求めるのが筋だと思いますし、営業本部からの指示を無視して良いという部長に問題があると思います。このような状況を解決するにはどのようにすれば良いでしょうか。
A41
「指示・命令系統」の整備を
本当に板挟みですね。
本社担当者からは直接の指示・実行報告を求められ、支店の部長は無視してよいと言う。
直接的にはこれは明らかに部長に問題があります。また、本社の担当者も部長を飛び越してあなた(課長)に直接指示を出すなど問題ですね。
この問題を解決するため、先ず指示・命令系統及び報告統制のあるべき姿(理想型)はどうなのかを考えてみましょう。
通常、指示・命令は会社で定められ、文書化された規程類に基づき発出されるものです。
またそれにより報告を求めるものです。
報告も定期的に報告すべき事項と随時に報告すべきもの、その他、実行報告、受領報告など規程化されたもので、全社的に組織的に統一された運用が必要になります。(ここでは詳細は省略しますが……)
本社からの指示は、担当者の思いつきやオーソライズされていないもの(規則にならないもの、上司に承認されていないもの等)を発出するべきではなく、本社の社長名、あるいは委任された部課長名で正式に支店長あるいは支店部課長宛に出すことが必要です。
本社からの指示・命令は基本的に重要なものであり、指示・命令を受領した支店長は報告義務が生じます。
報告を求めるのは、本社として長期的戦略的計画あるいは年度計画、全体計画などの作成、全社的な施策の実行などに反映させる重要な内容のはずです。
業務連絡や担当者の都合でお願いする程度のものであれば、担当者から担当者へのやり取りで良いのですが……、その場合は部長を介在する必要はありません。
本質問の内容であれば、業務系統を通した、きちんとした業務遂行が必要だと思われます。
繰り返しますが、重要な内容の指示や報告を求めるのであれば、社長が支店長へ、部長が支店の担当部長へという系統で指示・命令を出さなければなりません。
いわゆる重要な事柄については責任ある者から責任ある者へ指示・命令を出さなければならないのです。
つまり権威のあるもので、当然この部長みたいに無視などできない指示・命令を出さなければなりません。
以上のような基本を理解した上で、本問題の解決策を以下考えてみましょう。
- 先ず、指示・命令系統の基本及び報告についての規程類を整備する必要があります。
これがないからこの支店の部長が勝手にしなくてよいと判断する訳です。
そのため部長の属人的、勝手な判断による業務遂行となってしまいます。 - 指示・命令系統及び報告についての規程類が存在しない場合は、あなたの上司である部長の考えを変えることはなかなか難しいことですが、この場合、本社のそれなりの方(部長クラスから役員など)又は支店長から直接指導してもらう必要があります。
場合によっては、部長を無視してあなた(課長)が本社の担当者に報告するしかありませんね。これは邪道ではありますが……。 - いずれにせよ、難しいことではありますが部長とよく話し合い、何故相手にしなくてもよいと言っているのかを再度確認することも補佐者としてのあなた(課長)の重要な仕事です。
- もう一つ問題なのは、本社の担当者が何故、部長を通さずにあなた(課長)に指示し、報告を求めてくるのか、ということです。
ここは、本社担当者に支店部長を通して基本に基づき指示を出すように伝えて下さい。
以上述べましたが、あなた(課長)が板ばさみ状態になるのは、今のような状況であれば当然あり得ることです。今後も続くことでしょう。
まず根本的な原因である社内規程に指示・命令及び報告系統の決められたものがないのを改善(改革)しない限り、いつまでもこの種の問題が起こると思います。
明文化された規程類の整備が急務です。 原因を根本から治しましょう。小手先のやり方で解決しません。一時的解決では根治しません。
また、人が変っても、つまり部長やあなた(課長)あるいは本社の担当者が転属などで代ってもその地位、権限に基づき業務遂行がスムーズに行われるようにする必要があります。規程類が整備されていないことは仕事が属人化しやすくなりますので注意が必要です。
よくあることですが、本社と支店(現場)の相違について以下を付言しておきたいと思います。
基本的に重要なことは「本社と地方支店との立場の違い、視点の違いを知ること」です。
本社としては全国の各支店の統一された業務の実施や整一な業務の進捗など統制が必要なこともあります。
また、長期計画、年度計画などの作成に資する情報を得るため、一見価値のないように見える報告も全社的施策に重要な情報となることもあります。
支店レベルの考え方と本社レベルの考え方の相違ということも考慮して支店では本社の指示や求められた報告の意味等を理解する必要があるのです。
本社は現場の状況をよく把握して、決して支店の邪魔になったり、無駄な作業をさせないように、必要かつ重要な事項の報告を求めるように配慮することが望まれます。
特に繁忙な時期に不要不急な内容の報告を求めないなどの考慮も必要となります。
反面、支店は本社の意図を確認、承知して本社へ積極的に協力する姿勢を忘れてはなりません。
本社と支店が協調して会社の目的を達成していく訳ですから、是非両者の相互理解を深めて頂きたいと思います。
今回のまとめ
- 指示・命令系統や報告要領などについて規程類の整備をして属人的解釈を防ぎ、組織的活動をしましょう。
- 本社と支店の立場の違いを両者が理解することが重要です。
- 指示・命令は責任ある立場の人から責任ある立場の人へ発出しましょう。
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回答者: 呑田好文
元陸上自衛隊レンジャー教官。2002年退官(陸将補)
2018年よりアメリス顧問。2024年2月より同取締役。サロン・ド・アメリス講師。
自分と他人は違います。意見の違いは、間違いではありません。”違い”と”間違い”を混同しないようにしましょう。