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業務改革成功の秘訣

4ローマ帝国の強さの秘密も“業務文書”

1. マニュアルで最強となったローマ、3つの言語で発展したシチリア

塩野七生著「ローマ人の物語Ⅱ-ハンニバル戦記」によると、あのローマ帝国の強さの秘密も「徹底したマニュアル化であった」とあります。同書には、ローマ帝国でマニュアル化(業務文書化)が発展した理由を「ローマ人にはマニュアル化する理由があったのだ。指揮官から兵から、毎年変わるのである。誰がやっても同じ結果を生むためには、細部まで細かく決めておく必要があった。」等、ローマ帝国の戦略(ローマニゼーション)と共に解説されており、戦略変更のスピード感と人材の多様化が迫られている今日の日本企業の経営にとって示唆に富んでおります。

地中海にのびるイタリア半島の先端、いわゆる「長靴のつま先」の先にあるシチリアは、11~12世紀にかけてシチリア王国として凄まじい発展を遂げています。なぜあれだけの小国がビザンツ帝国、神聖ローマ帝国、イスラム諸国といった大国に囲まれながら、4代も王が続き発展したのか、西欧歴史学者の間で最大の関心事だったといわれています。

このシチリアの国家統治モデルを解明しシチリア研究の世界的権威となった高山博教授(東京大学)によると、シチリアも「業務文書」に当たるものが徹底的に整備されていました。しかもシチリアは、王宮内に官僚として多様な民族を受け入れていたために、業務文書は複数の言語(ギリシャ語、ラテン語、アラビア語)で併記されていたというから、徹底的といえます。後にも触れますが、実はこの複数言語で併記されることが、「属人化」や「既存組織のパラダイム」に陥ることを回避し、シチリア王国の国家統治(内部統制)を高い水準に押しあげた、大きなポイントだったのです。
(参考:「中世シチリア王国の研究―異文化が交差する地中海世界」高山博著)

※参考①:ローマ帝国
ローマ帝国は対戦した相手国(=敗戦国)に自国の市民権を与え、ローマ軍として戦ってもらい、国を大きくしていったというのは有名な話です。

※参考②:シチリア王国
シチリア王国は元々、ノルマンディー出身の少数民族が南下してきてこの“長靴のつま先”を支配したことに始まります。王は代々ノルマンディー出身の家系でしたが、少数民族ゆえに、王妃はフランスやスペイン等の出身、宰相はギリシャ人、ラテン系、アラブ人等、王宮の知識人、料理長や宦官等はイスラム教徒を始め複数の民族から構成されるなど、「究極のダイバーシティ(多様性)」を利かせながら優秀な人材を集め、国を発展させました。

2. 歴史上の国々から学ぶこと

これら歴史上発展した国々から、国の統治と業務文書の整備に関して、以下の3つのポイントが見えてきます。

(1)文書作成に専門部隊を充てる

ローマ帝国、シチリア王国に共通して言えることは、「業務文書の作成にしっかりとリソースを割いている」ということです。
まさか、彼らは前線で戦っている戦士や隊長にマニュアル等の業務文書を書かせていたわけではありません。そんなことやらせていたらたちまち攻め込まれて負けてしまいます。
当然、文書作成の専門部隊がいたわけであり、その専門部隊が「前線を支援する」ことで初めて前線部隊が力を発揮できます。

(2)第三者の目で書く

文書作成の専門部隊を設けることは、リソースの問題の他にも効果があります。それは、第三者的な目を通して描くことで、より文書の内容が客観的な記載になり、「誰が読んでも意味が分かる」ものになるということです。
普段業務に携わっている前線部隊だけで文書を作成してしまうと、ついつい「書かなくてもわかるだろう」といって文章が省略されたり、言葉の定義があいまいになってしまったりします。もちろん、業務の詳細は業務にあたっている前線部隊の方にしかわからないことも沢山ありますので、その方々の協力は絶対に必要なのですが、文章の仕上げには、客観的に文章を磨き上げていくプロフェッショナルが必要です。

高山先生は、シチリアの研究で自分が数々の歴史上の謎を解き明かし、世界的権威となることができたのも「自分が日本人であったからだ」、と仰っています。イタリアなどシチリアに何らかの影響を与えている国出身の研究者の方々では、自国の言語や文化のパラダイムを破ることができず、シチリアの当時の真の姿を見ることはできなかったわけです。

(3)複数の目線で書く

高山先生は、「シチリアには複数の言語で記された資料があったからこそ、それぞれの文化圏を相対化しつつ、その国の本質を立体的に理解することができた。こういった資料がないと、直線的な歴史像になってしまい、本質をつかむことができない。」と仰っています。
業務文書における言語は何も「複数の言語」で書かれる必要はないのですが、「財務会計、IT、業務」という3つの目線(観点)から書かれる必要はあります。
会計コンサルによるJ-SOX資料や、ITベンダーが作ったシステム用の業務フロー図では「現場業務では使えない」となってしまうのは、業務文書がこの3つの目線を全て網羅した形で作られなければならないということを意味しています。

3. 日本のビジネスシーンを考える

上記のように、ローマ帝国もシチリア王国も、様々な民族、背景を持った人達が活躍できるように「多言語」対応の業務文書を「専門部隊」により整備することで国を大きくしていったわけです。
ひるがえって日本のビジネスシーンはどうでしょう?
“日本は単一民族だから大丈夫”などといって安心できる時代ではなくなっているのは皆様もご承知のとおりです。人材の流動性は高まり、正規社員の割合は全体の4割、新卒社員の3割は3年で転職と言われる時代となりました。
どこかであなたの会社の競合が、ローマ帝国のようにマニュアルを整備しだしたら、たちどころに優秀な人材がそこに吸い込まれていってしまうかもしれません。
さぁ、皆さんも「業務文書にリソースを割く」と決心し、会社を大きく、会社を良くしていきましょう。

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